この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
潮騒
第9章 正一郎 不在の夏 ー大時化ー
腹が張って、カチカチになっている。
ギュッと絞られるような、痛み。
マズい…
腹を抑えて屈んだ菊乃に気づいた者が周りに集まってきた。
「ほら、言わんこっちゃない!」
「冷えたんじゃ。これ被っとけ!」
着替えの乾いた着物を肩に掛けてくれる人があり、菊乃は震えながらその着物に包まった。
青い顔で着物を掻き寄せ、震える菊乃。
だがしばらくすると、その痛みもふっと楽になってくる。
…これはもしや…陣痛…?
血の気が引くのがわかった。
だとしたら動けるうちに家に帰らないと。
ゆっくりと立ち上がり、着物を貸してくれた人に声をかける。
「…すまんけど、これ借りてもええですか?後で洗ろて戻します」
「おぉ、持ってけ持ってけ!大丈夫かい?」
「今、ちょっとマシやから…」
「おぃ、誰かついて行ったれ。あともうひとり、誰か家のもんに知らせたれや」
ギュッと絞られるような、痛み。
マズい…
腹を抑えて屈んだ菊乃に気づいた者が周りに集まってきた。
「ほら、言わんこっちゃない!」
「冷えたんじゃ。これ被っとけ!」
着替えの乾いた着物を肩に掛けてくれる人があり、菊乃は震えながらその着物に包まった。
青い顔で着物を掻き寄せ、震える菊乃。
だがしばらくすると、その痛みもふっと楽になってくる。
…これはもしや…陣痛…?
血の気が引くのがわかった。
だとしたら動けるうちに家に帰らないと。
ゆっくりと立ち上がり、着物を貸してくれた人に声をかける。
「…すまんけど、これ借りてもええですか?後で洗ろて戻します」
「おぉ、持ってけ持ってけ!大丈夫かい?」
「今、ちょっとマシやから…」
「おぃ、誰かついて行ったれ。あともうひとり、誰か家のもんに知らせたれや」