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潮騒
第2章 身代わりの花嫁 ー風波ー
それから程なくして、細やかな祝言が執り行われる。
支度をした菊乃に、姉のサキゑは目を細めて微笑んだ。
「綺麗やわ、菊乃!」
無邪気に喜ぶ様子を見ると、己が嫁ぐはずだったことなど知らないのだろう。
ちらっと横目で母を見ると、厳しい目で小さく首を横に振った。サキゑには言うな、ということだろう。
姉がこのことを知ったら、気に病むのは目に見えている。
もとより、己の所為でもない病弱な身体で、家の事も満足に出来ぬこと、薬代が掛かることも気に病んで、早よ死んでもたらええのになぁ、と言うのが口癖の姉だ。
それでも、よく本を読むので、物知りだし、手先は器用で刺繍や裁縫なども上手い。
菊乃が今日身に付ける衣装にも、襟元にめでたい鶴と亀の刺繍をしてくれた。
勉強も裁縫も苦手で、身体が丈夫なのだけが取り柄の菊乃とは対照的だったが、姉妹仲は決して悪くはなかった。
支度をした菊乃に、姉のサキゑは目を細めて微笑んだ。
「綺麗やわ、菊乃!」
無邪気に喜ぶ様子を見ると、己が嫁ぐはずだったことなど知らないのだろう。
ちらっと横目で母を見ると、厳しい目で小さく首を横に振った。サキゑには言うな、ということだろう。
姉がこのことを知ったら、気に病むのは目に見えている。
もとより、己の所為でもない病弱な身体で、家の事も満足に出来ぬこと、薬代が掛かることも気に病んで、早よ死んでもたらええのになぁ、と言うのが口癖の姉だ。
それでも、よく本を読むので、物知りだし、手先は器用で刺繍や裁縫なども上手い。
菊乃が今日身に付ける衣装にも、襟元にめでたい鶴と亀の刺繍をしてくれた。
勉強も裁縫も苦手で、身体が丈夫なのだけが取り柄の菊乃とは対照的だったが、姉妹仲は決して悪くはなかった。