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潮騒
第10章 出産 ー高波ー
途中で別れた勝二が、酒屋の婆さんを連れてきた。
婆さんは菊乃を見ると直ぐに状況を飲み込み、家から持ってきた大きな裁ち鋏で、ついたままだった臍の緒をジョキンと切る。
血が落ちた赤ん坊は、冷えたせいか紫色だった。
ぐったりとして泣く気配もない。
酒屋の婆さんは、タツノから赤ん坊を取り上げると、足を持って逆さに吊るし、背中を叩いた。
「おばさん、何しよるん⁉︎」
焦るタツノに、
「赤ん坊が息してない時に、産婆がやりよったんや!とりあえず息をさしたらんことにはしょうないやろ!もう死んどったら痛ない!」
パンパンと何度か背中を叩くと、赤ん坊の身体がビクリと震え、ふぁーん、と頼りない鳴き声を放った。
「よかった!生きとる!」
タツノと小吉は顔を見合わせ、今にも泣きそうだ。
「赤ちゃん…泣いた…」
菊乃が弱く微笑んだ。
小吉は立ち上がり、血に染まった盥の湯を棄て、二度目の湯が盥に張られる。
酒屋の婆さんは赤ん坊をタツノに託し、菊乃の腹をさすりながら臍の緒をゆっくりと引く。
ズルリ、と胎盤が出てきた。
その時、ヨシが家の奥から現れる。
婆さんは菊乃を見ると直ぐに状況を飲み込み、家から持ってきた大きな裁ち鋏で、ついたままだった臍の緒をジョキンと切る。
血が落ちた赤ん坊は、冷えたせいか紫色だった。
ぐったりとして泣く気配もない。
酒屋の婆さんは、タツノから赤ん坊を取り上げると、足を持って逆さに吊るし、背中を叩いた。
「おばさん、何しよるん⁉︎」
焦るタツノに、
「赤ん坊が息してない時に、産婆がやりよったんや!とりあえず息をさしたらんことにはしょうないやろ!もう死んどったら痛ない!」
パンパンと何度か背中を叩くと、赤ん坊の身体がビクリと震え、ふぁーん、と頼りない鳴き声を放った。
「よかった!生きとる!」
タツノと小吉は顔を見合わせ、今にも泣きそうだ。
「赤ちゃん…泣いた…」
菊乃が弱く微笑んだ。
小吉は立ち上がり、血に染まった盥の湯を棄て、二度目の湯が盥に張られる。
酒屋の婆さんは赤ん坊をタツノに託し、菊乃の腹をさすりながら臍の緒をゆっくりと引く。
ズルリ、と胎盤が出てきた。
その時、ヨシが家の奥から現れる。