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まほろばマボロシ~仮初めの結婚~
第10章 触れる手の温もり
そうして結翔は促されるままに浴室へ…鞄を片づけてふとポケットに手を入れた時だ、カサリと音を立てて紙が手に触れた。

「あ、これ…言わなきゃいけなかったのに」

そう。雅が出したのは宮田にもらった連絡先だった。さっきの車内で言うことだって出来たのに。

忘れていたのか…それとも言えなかったのか…ただ今となってはどちらとも言えなくなっていた。

ガタ…ガチャ…

そんな音と同時に結翔はリビングに入ってきた。ソファの後ろからそっとのぞき込む。

「どうしたの?それ」
「え?」
「それ、和の字でしょ?」
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