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いとかなし
第13章 こいすちょう わがなはまだき たちにけり
目が覚めた時、自分の布団で眠っていた啓司の優しさが少しだけ寂しかった。

ブランチが冷蔵庫にあるメモが残されていて、仕事があるから声を掛けずに行ってごめんとも記されていた。

カフェメニューの様な木のお皿に載ったブランチは、一人で食べても美味しさが半減だ。

昨日の激しさがあっただけに反動が大きい。

「ふゆ、お散歩行こうか?」

スマホと鍵を手にゆっくりと歩き出す。

途中の公園でふゆにお水をやり、一休みする。

と、スマホが震え着信を知らせる。

画面に表れた名前は賢都だった。

「もしもし?」

『あ、やっぱり糸さんだ』

顔を上げると、50メートルほど先で賢都が大きく手を振っていた。

糸が手を挙げると嬉しそうに駆け寄ってきた。
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