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いとかなし
第13章 こいすちょう わがなはまだき たちにけり
ランニングウエアを纏った賢都は、スーツの時よりも幼く見えた。

「いつもこの辺走ってるの?」

「いや、たまには遠出もいいかなと思って、糸さんは?」

「私はいつもの散歩コースだよ」

「名前は?」

「ふゆ」

名前を呼ばれて上目遣いに賢都を見るふゆ。

「可愛いなぁ、俺、断然イヌ派!」

顎を撫でるとふゆは気持ちよさそうに目を細めた。

「糸さん、俺に…見覚えありません?」

「え?」

賢都はふゆを撫でたまま、視線も落ちたままだ。

糸は賢都の横顔をまじまじと見つめるけれど、記憶の琴線にふれるものは無かった。

「…えっ…と…ごめん…」

「中学の時、サッカー部の先輩にチョコレート渡しましたよね?」

賢都に言われてもピンと来ない糸は、中学のサッカー部の記憶を辿った。

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