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いとかなし
第2章 あふことの たえてしなくは なかなかに
車高のあるSUV車は見晴らしがいい。

「改めて、甘利 啓司(あまり けいし)です、初めまして」

「鴻上 糸(こうがみ いと)です…」

「ちいちゃんと同じ会社なんだよね?」

車は程なくしてスーパーの駐車場に着く。

カートを引く啓司の隣を歩く。

180以上はある啓司。

広い肩幅とTシャツの上からでもわかる厚い胸板は、それなりに鍛えられたものだろう。

それでも威圧感すら感じないのは、糸に向ける笑顔が屈託のないものだからだ。

「焼肉のたれと、紙皿と、紙コップ、あと酒ね、糸ちゃんは何か欲しいものないの?今なら会費で買い放題だよ」

「大丈夫です」

「じゃあ俺はアイス買おうっと、一緒に食べる?」

子供っぽい無邪気な笑顔につられるように頷いていた。
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