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いとかなし
第18章 ますらおも かくこいけるを
目を覚ますと、そこには啓司が居た。

「…こんなところで寝てると風邪ひくよ、それから…電話掛かってきてた」

いつの間にかブランケットが掛けられていて、糸のスマホが差し出される。

着信履歴は賢都。

啓司は口籠もったまま、糸に背を向けた。

「啓司!待って!!」

向けられた背中を引き留める。

表情は見えないけれど、強張った背中が…表情を語っている。

「…私…啓司さんの事が知りたいんです…無理しないで欲しいし…揺れたのは…ごめんなさい…賢都くんは…ッンン」

振り向きざまに啓司が唇を塞いだ。

「他の男の名前なんて呼ばないで」

頬に触れた少しひんやりとした啓司の手が不安に震えているようで、糸はその手に自分の手を重ねた。
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