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いとかなし
第20章 おもいわび さてもいのちは あるものを
びくっびくっと身体を痙攣させた糸は、ベットに突っ伏したままはぁはぁと荒い呼吸を繰り返している。

「ひあぁっ」

前触れもなくずるりと引き抜かれたオモチャは、べとべとに光ったままシーツの上で震えている。

「糸」

優しく名前を呼ぶ啓司に応えるように、重い瞼を押し上げる。

「啓司…」

微笑んで手首のネクタイを外した。

赤みを帯びてしまった手首にキスをする啓司。

「…許してくれる…?」

糸の呟きに目を丸くした啓司は、直ぐに眼を細めた。

「許してくれる?」

啓司は答える代わりにキスをした。

「俺が悪いのに、どうして糸が泣くの?」

重力のままにこぼれ落ちて行く涙を指先で拭う。

「好きだよ、啓司」

「知ってるよ」
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