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いとかなし
第4章 しのぶれど 色に出にけり
「啓司さん、いいと思うよ?最近の糸は本当良い顔してる、あとちょっと勇気を出すだけじゃない?」

「甘利さん、きっとモテるよね」

「まぁあの性格だし、否定はしないけど」

たった一人への思いだけで、晴れたり翳ったり。

「啓司さんなら、受け止めてくれると思うな」

そう、答えがイエスでも、ノーでも。

午後は入力業務に徹底する。

「鴻上、これの見積もり頼みたいんだけどいい?」

綾時が終業間際に持ってきたそれを正確に入力する。

「終わったら飯でも奢るよ」

喜びよりも先に啓司の顔が浮かんだ。

「ありがとう、でも家で散歩待ってる子がいるから」

「んーじゃあまたな、今日はこれで」

甘いカフェオレの缶を机に置かれて、糸は微笑んだ。
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