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いとかなし
第4章 しのぶれど 色に出にけり
昨夜はお互い外食だったにも関わらず、今朝もしっかりお弁当が用意され、恒例になった千津子のランチと半分こされる。

「お惣菜作るのが上手な男って普通引くわよね」

「でも美味しいんだもん」

千津子の箸はランチをそっちのけで、五目豆を突き続けている。

「で?啓司さんの事だっけ?」

「ん…甘利さん優しいし…どういう意味なのかな」

「可愛いって、そのままじゃない?」

「でも、しぐれにも言ってるよ?」

シメとばかりに卵焼きを頬張った千津子は真っ直ぐ糸を見つめた。

「つまり糸は自分だけに言って欲しいんでしょ?それってもう啓司さんを好きって事じゃないの?」

「…っ…す、き…好き…」

噛みしめるようにその二言を紡ぐ。
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