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いとかなし
第6章 君ならで誰にか見せむ
病院へ着いたのは昼前で先に食堂へ向かった。

A定食を買って窓辺の先へ着く。

相変わらずメールはない。

「おはよ、なにそのため息」

「おはよ…ほっとけよ」

リハビリテーション科の看護師、篠 深月(しの みづき)は麺定食のトレーを向かい側に置いた。

「何、誰からの連絡待ちなの?」

「女って、どういう時に泣くの?」

うどんが喉につかえてむせる深月。

「ど、ういうって…また泣かせたの?」

「またじゃねえよ」

「キスしたら泣いちゃった、とか?」

今度は啓司がむせた。

「やだ、汚い〜図星?」

じとっと深月を睨む。

「泣くほど嫌だったかー…」

啓司は視線をスマホに落とす。

「どさくさ紛れにされたのが嫌だったのか」

思い当たる節がありすぎて、深月を見る。
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