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いとかなし
第9章 こいしなん ゆくえをだにも
「ふっ、ンンッ、はっ、あっ、も、やぁっ」

もう少し、もう少しで波に呑まれる…その時、不意に指が抜かれてしまう。

「…はぁ…ん…」

糸は行き場の無くなった快楽を持て余す。

「そんな切ない瞳で見ないで、ここびしょびしょにしちゃったら、寝れなくなるだろ?」

小さな染みが既に出来ていて、糸は真っ赤になった。

歩とでもこんなに濡れた事はない。

啓司は糸のそれを見つめて何かを思っている姿に苛ついた。

手を引いて立たせると、肌蹴ていた浴衣をその場に落とし、露天風呂へと向かった。

闇色に染まった湯に二人で浸かる。

啓司の膝の間に糸が向き合って座る。

空には星が瞬いていて、この上なくロマンチックだった。
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