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いとかなし
第10章 いろみえで うつろうものは よのなかの
自分を求めてくれた証のそれを愛おしく感じる。

「よっ、と」

手を伸ばして上半身が湯船の外に出ると、引き締まったお尻、割れた腹筋ににどうしても目がいってしまう。

「ん?」

湯船に戻ってきた啓司からあからさまに視線を逸らしてしまい、それに気づかれてしまう。

「何?」

「なんでもな…ッン」

言葉を遮るキス。

「言わないとわからない」

糸は啓司の視線に促されるように、躊躇いがちに口を開いた。

「わ、私、も…触って…みたいな…なんて」

「ふ〜ん、いいよ」

ニヤリと笑う啓司はずいっと身体を近づけた。

ちゅっと音を立てて糸の頬にキスをする。

「あ、の、近過ぎてっ」

糸は二つの体の間に潜り込ませた手を啓司の胸板に押し当てた。
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