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kiss
第10章 hand

 バスケに加わっていた帯乃が俺たちを見て意外そうに眉を上げた。
「桃ちゃん……めっちゃ笑ってる」
 すらりとしたモデル体形。
 芸能人て凄いな。
「浮気しないでよ桃ちゃーん」
 隣で桃木が舌打ちする。
「阿呆」
「洋ちゃんはフリーだけど処女ですよ」
「何を言ってるんだあの人は……」
 美浦の言葉にけらけら笑う帯乃ときょとんとする隼を呆れた眼で見るタヤ。
「苦労するな、お互い」
「まあバカップル見てる感じですよ」
 ふーっと二人の白い息が混ざる。
 夕陽を浴びて、ゆらゆら漂う。
「付き合わされてる同士、付き合っちまうか?」
「良いですね、それ」
 ぼーっと返事をして、ハッとする。
 何言った、俺。
 桃木は眼を細めて俺の肩を叩いた。
「冗談だ」
「あ、はい」
 バスケを終えた四人が戻ってくる。
 俺は美浦と隼に、桃木はタヤと帯乃にタオルを手渡す。
「たまにはいいね、こういうの」
「帯乃さん強すぎです」
「直彦っ、もっと頑張ろ!」
「ハヤ……そう言われたら頑張っちゃうよ、僕」
 家族かな、これは。
 気が抜けてしまう。
 安心?
 なんだろう。
 この空間は悪くない。
「洋ちゃんと桃ちゃんもやろうよ」
 隼の一声に五人の大人が目の色を変える。
 勝負師の色に。
「三対三だね」
 帯乃がタオルを腕に巻く。
 アイコンタクトでタヤと桃木も巻いた。
 なるほど、ユニフォーム代わりか。
「直彦っ洋ちゃん! 勝つよ!」
「景品は?」
「夕飯。ボク鰻がいいなあ」
「負けたらお前が支払えよ」
「ボクの財布は桃ちゃんだよ」
「僕の財布は洋ちゃんだっけ」
「やめてください破産します」
 そろそろ太陽が沈む。
 六人が位置につき、ボールを隼が手に持った。
 大の大人が、この少年の周りで本気にさせられている。
 確かに、隼は凄い子だな。
「れでぃー……ふぁいっ」
「ゴーでしょ」
「ハヤ、怖い怖い」
 ボールは初めて真っ直ぐ、美浦に向かって飛んだ。
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