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kiss
第13章 arm

 豆電球が揺れている。
 その下で、小さなテーブルを四人が囲む。
 手を水平に回しながら。
 牌を混ぜるように。
「奈津、またお前の上がりかよ」
 舌打ちしながら侑都が噛みつく。
 言われた本人は片眉をくいっとあげながらニヤリと笑う。
「やっすいけどね~」
「親流されたからって負け惜しみはカッコ悪ぅ」
「萌未、そう本当のこというな」
「おいこら。そこ聞こえてんぞ。萌未と颯……お前らだって負け続けてんだろうが」
 決まったタイミングなど無いが、四人は息を合わせて牌を並べてゆく。
 緑の生地の上、軽快に。
 こうして上から見ると、手も個性が色々だということがわかる。
 侑都は金のゴツい指輪が両手の中指に煌めいて、毛の濃い手の甲を一層引き立たせる。
 青いネイルとラメで飾られた萌未の手は、唯一の女ともあり細くか弱い印象を受ける。
 もっとも、二十六にして白髪混じりの淡い茶髪は清楚の欠片も無いが。
 ちらりと颯は奈津を見る。
 真面目腐ったような黒、だが手入れはワックスばかりかというほど荒れた毛先に好きに伸びた髪。
 影に沈む暗い橙の瞳は、二重に相応しいはっきりとした光をその中に潜めている。
 何ヵ月クリーニングしてないのかわからない白シャツに臙脂のジーンズ。
 ボタンの空いた胸元にはシンプルな翡翠のチョーカーが垂れている。
ーエロいんだろうなー
 颯はじーっと奈津の鎖骨を眺めてぼんやりと想像した。
 セックスする奈津を。
 女を上に跨がらせて下から突くタイプ。
 多分そうだ。
 色白だが、がっしりとした腕。
 それで腰を掴むんだろ。
 タン。
 親の奈津が北を捨てる。
 ドラで、さらに颯の風。
「……ムカツク」
「頭にすりゃいーだろ」
「颯、云っても無駄だ」
 侑都が手の中で捨て牌を転がしながら萌未に目線を送る。
「んー……これかな」
 白が場に置かれる。
「一巡で悩むなよ」
「あたし国士無双出してみたいんだよね~無理だけどさあ」
「やめとけやめとけ。嫁に行く運使い果たして孤独死まっしぐらだぞ」
 鋭く投げられたライターが侑都の額を直撃する。
「いって!」
「死ね!」
 ごみを見るような眼で侑都を睨んだ萌未が、傍らの缶を掴んで中身を飲み干す。
「てめえ、手出すの早すぎんだろ」
「あーうざーい。バツ三の男がなんか言ってるう」
「……くそっ」
 二人を横目に北を捨てる。
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