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kiss
第15章 Hair
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俺にもあんのかな。
ストライクポイント。
「忍」
「あ?」
いつの間にか箸を置いていた拓が、テーブルに手を突いて、こちらに前屈みになる。
近い。
「なんだよ?」
声が震えないよう。
動揺しないよう。
バクバクと煩い心臓を無視する。
「……俺の鎖骨好きなの?」
かあっと顔が発熱する。
「ばっ、てめえバカだろ!? ビール二本で酔ってんじゃねえぞ」
ガタン、とテーブルが揺れる。
拓はそれを押し退けて、まだ箸を持ったままの俺に近づく。
頭上の壁に両手をついて、見下ろされる。
やけに拓が大きく見えた。
「……あれだけ見といてよく言うよ」
「違うっ。あれは」
「なに?」
やべえ。
声が近いから、ゾクゾクする。
箸を両手で握りしめて、拓に向ける。
「忍」
「あ、あっち戻れ……刺すぞ」
なんて情けない声だ。
テリトリーゾーン。
それを簡単に侵してくる男。
だから、怖いんだ。
たまに本気で、てめえが怖くなる。
そっと手が添えられたかと思うと、傍らに箸が弾かれ、気づいたときには唇が触れ合っていた。
「ん……んう」
眼を瞑ると同時に涙が零れた。
暖かい舌が唇を舐めて、中に入ってくる。
肩から力が抜けて、ただ為すがままになってしまう。
長い髪に指が差し込まれ掻き上げられると、首筋が総毛立つ。
「や、……め」
なんとか肩を掴んで、拓を引き剥がす。
お互い息が切れていた。
壁にもたれかかったまま、脱力する。
「誰が見るかよ……てめえの」
「忍って素直じゃないよね」
「っ、まさかこれ目的に息巻いて作ったのかよ」
「違う。オレは単純に忍を喜ばせたかったんだ」
だから……
このアホは。
両腕を伸ばして拓の首を抱く。
突然のことに反応できない強張った首筋に歯を当てた。
「いっ」
犬歯で甘く噛み、それから舌を這わせる。
「し、のぶ!」
本気で焦ってるのが面白くて、喉仏から下に沿わせ、浮き出た骨の窪みを舐める。
汗の味。
「んっ、やめろって」
慣れてない反応。
ああ。
嘘じゃねえんだな。
てめえも童貞か。
真っ赤になりやがって。
「あんま嬉しいこと言うな、拓」
「え……?」
「てめえから離れられなくなるだろうが」
眼を逸らそうとしたが、顎を掴まれ無理やり顔を合わせられる。
「それはオレの台詞なんだけど」
「だろうな」
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