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kiss
第3章 lip
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撒いたところで息を整える。
乱れた服を整え、しゃがみこむ。
怖かった。
本当に怖かった。
腕に顔を埋めて泣く。
なんで僕は外に出てしまったんだろう。
ネットと違って危険だらけの外に。
ふらふらと駅に戻る。
改札口に覚えのある影を見て、背筋が凍りついた。
あの痴漢が血走った目で辺りを鋭く見回している。
僕を、探して。
すっと口を手が塞いだ。
「静かに。西口から行けば問題ないから」
翔が汗をかいた顔でそこにいた。
手を引いて、安全な方へと導く。
足が上手く動かない僕を心配して、歩調を合わせて。
また目頭が熱くなる。
今は、この大きな手を信じるしかなかった。
「なんで帰んなかったの?」
切符を手にした翔に尋ねる。
「だってあんたが死にそうな顔して出て行くから。あのままだと連れ去られてもおかしくなかった」
なんで。
僕がどうなろうとアナタになんの関係があるんだ。
そう言う代わりに、僕は彼の裾を掴んだ。
振り向いた翔に謝る。
「……助けてくれたのに、ごめん」
「気にしなくていいよ。無事で良かった。あ、いや、無事じゃないか」
「え?」
意味がわからず彼を見上げると、目を逸らされてしまった。
ああ、そうか。
こうしてまた離れるんだ。
また35℃の世界に僕は戻る。
あの、安全で退屈な日々に。
目当ての駅に着き、二人で降りる。
「じゃあ、ありがとう」
足を踏み出すと同時に世界が反転した。
また、彼の腕の中にいた。
「ちょ、ちょっと」
ギュウウッと朝より強く抱き締められる。
沢山人がいる中で。
僕は顔が紅潮するのを感じた。
「放しっ」
「好きだ」
耳元ではっきり聞こえた言葉。
全ての雑音が消える。
「何言って……」
「俺以外の男を全員消してでも手に入れたいんだ」
熱が上がる。
平熱を脱して、僕はぼーっとした。
「勘違いしてない?」
翔が僕を離す。
「女の子じゃないんだよ?」
「百も承知」
その言い方に笑ってしまう。
それから右手で唇を触れられた。
「……先に奪っとけば良かった」
耳まで紅くなる。
「だから、僕は」
「男だな」
先回りされて、唇を噛む。
本当に何考えてるんだ。
僕なんかに構っちゃって。
モテるだろうに。
「楓って呼んでいいか」
乱れた服を整え、しゃがみこむ。
怖かった。
本当に怖かった。
腕に顔を埋めて泣く。
なんで僕は外に出てしまったんだろう。
ネットと違って危険だらけの外に。
ふらふらと駅に戻る。
改札口に覚えのある影を見て、背筋が凍りついた。
あの痴漢が血走った目で辺りを鋭く見回している。
僕を、探して。
すっと口を手が塞いだ。
「静かに。西口から行けば問題ないから」
翔が汗をかいた顔でそこにいた。
手を引いて、安全な方へと導く。
足が上手く動かない僕を心配して、歩調を合わせて。
また目頭が熱くなる。
今は、この大きな手を信じるしかなかった。
「なんで帰んなかったの?」
切符を手にした翔に尋ねる。
「だってあんたが死にそうな顔して出て行くから。あのままだと連れ去られてもおかしくなかった」
なんで。
僕がどうなろうとアナタになんの関係があるんだ。
そう言う代わりに、僕は彼の裾を掴んだ。
振り向いた翔に謝る。
「……助けてくれたのに、ごめん」
「気にしなくていいよ。無事で良かった。あ、いや、無事じゃないか」
「え?」
意味がわからず彼を見上げると、目を逸らされてしまった。
ああ、そうか。
こうしてまた離れるんだ。
また35℃の世界に僕は戻る。
あの、安全で退屈な日々に。
目当ての駅に着き、二人で降りる。
「じゃあ、ありがとう」
足を踏み出すと同時に世界が反転した。
また、彼の腕の中にいた。
「ちょ、ちょっと」
ギュウウッと朝より強く抱き締められる。
沢山人がいる中で。
僕は顔が紅潮するのを感じた。
「放しっ」
「好きだ」
耳元ではっきり聞こえた言葉。
全ての雑音が消える。
「何言って……」
「俺以外の男を全員消してでも手に入れたいんだ」
熱が上がる。
平熱を脱して、僕はぼーっとした。
「勘違いしてない?」
翔が僕を離す。
「女の子じゃないんだよ?」
「百も承知」
その言い方に笑ってしまう。
それから右手で唇を触れられた。
「……先に奪っとけば良かった」
耳まで紅くなる。
「だから、僕は」
「男だな」
先回りされて、唇を噛む。
本当に何考えてるんだ。
僕なんかに構っちゃって。
モテるだろうに。
「楓って呼んでいいか」
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