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kiss
第4章 ★rouge
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次は何の科目とか。
今日の豆テストはどうだったとか。
昼食のメニューとか。
最近ハマったアーティストとか。
なにもかもどうでもいい。
舞がそれを話してるってことだけが、私にとっては大事なこと。
「……だからね、もうお腹痛いくらい笑っちゃってさー。ねえ、友美は誰が好きなの?」
「え?」
急に好きと訊かれて思考が止まる。
なにせ、舞のカールがかった髪が揺れるのを眺めていて話を聞いていなかったから。
薄いブラウンの髪。
首を傾ける癖のある舞は、いつも風に靡かれているように髪を揺らす。
肩のあたりで巻き、少し顔を隠している。
たまに覗く耳が小ぶりで、はっとしてしまう。
それから視線は唇に移る。
桃色に紅を差したようなくっきりした輪郭。
緩く開いた色気に鳥肌立つ。
「友美ー? おぉーい」
「あっ。えっと、唇が好きかな」
「へ?」
舞が大きな眼をさらに開く。
それからクスクス笑った。
「やだー。友美って本当に天然でかわいいよね。だから、MONOのメンバーでは誰が好きなのって」
「……消しゴム?」
「違うっ。今までの話全然聞いてなかったの? 昨日特番でMONOが全員で遊園地に行く特集やってたから……もういい。友美、アイドルとか興味ないよね」
「KAGURAは好きだけど」
私は髪をいじりながらつぶやく。
「ヴィジュアル系かぁ。友美がおすすめしてくれたからKAGURAさんは好きだよ。でも今はMONOが最高なの」
ふわふわした外見と同じ。
舞は一つのものには留まらず、いつも新しいことを見つける。
毎日話しているのに、わからない話題が沢山ある。
「友美、じっとしてて」
「えっ」
突然真剣な目になった舞が手を伸ばしてくる。
私の耳あたりにそっと触れ、すぐに離れた。
「綿がついてたの」
「あ……ありがと」
「友美って髪長いよね。うらやましい……サラサラで細いし」
すーっと髪を梳く舞の指に神経が集中する。
背中が微かに痙攣し、首に寒気が走る。
気づかれないうちに、私は舞の手を掴んだ。
「友美?」
「私よりさ、舞の方がずっと髪綺麗よ」
「ふふ。嬉しいなぁ」
自分の頭を撫でながら笑う姿にクラクラする。
「舞……」
「あ、時間だね。早く移動しなくちゃね」
私は疼く胸を押さえて頷いた。
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