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kiss
第6章 ignorant

「雛ー! 雛ー?」

 朋が呼んでる。
 答えてなんかやんないけど。
 段々近づいてくる声。
 見つけられるかな。
 かくれんぼ。
「雛、どこー?」
 声を殺して、息を潜めて。
 ほら。
 やっぱり朋は気づかない。
 僕が隠れてる茂みを素通り。
「雛……んんっ」
 あれ。
 声が途絶える。
 気配も消えた。
 おかしい。
 ガサッ。
 茂みから出て朋の姿を探す。
 どこ。
 公園には誰もいない。
 朋?
「なんで…」
 車が走る音。
 大きな車。
 黒い車。
 カーテンを下ろして、去っていく。
 信号で止まった。
 砂利道を走る。
 必死で腕を振って。
 はやくしなきゃ。
 はやく。
 早く。
 速く。
「朋っ」
 青い光に誘われるように、車は動き出す。
 追いつかなきゃ。
 小石が飛ぶ。
 走る。
 もっと。
 もっと。
 いそげ。
 急げ。
 手を伸ばした先で、車のドアが開いた。
 男が歩いて来る。
 逃げたい。
 怖い。

「キミも来る?」

 両手で顔を塞ぐ。
 ああ。
 男の手は真っ黒。
 グイッと腕を引かれた。

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