この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
kiss
第6章 ignorant
 悲鳴と共に目を覚ます。
「雛っ」
「と……朋」
 隣の布団から移って来てくれた朋にしがみつく。
 汗で着物が濡れている。
 雛は朱。
 ぼくは蒼。
「大丈夫だよ。夢なんて怖くない」
 見上げると、雛は目を瞑って優しくぼくを撫でていた。
 双子の兄。
 幼い頃から毎日一緒。
 今だって。
 ズズ、と着物の裾を引きずり、朋に寄り添う。
「あの日さ……本当に怖いことなんてなかったんだよな」
「言ったよね、雛。ボクらは秋倉おじさんに助けて貰ったんだって。ほら今はこんなに綺麗な服だし、部屋もこんなに広い」
 朋と違い、ぼくはオドオドと部屋を見渡す。
 だって、夢が言うんだ。
 あのとき手を伸ばしたおじさんは悪い人だって。
 こんな着物、着たくない。
 重いし、動きづらい。
 なにより、これ女の子が着るやつ。
「そんなこと言わないの」
「だって……」
 あのかくれんぼ。
 あれから家に帰ってない。
 もう三年だ。
 お互い十歳になった。
 大きなこの館で、色んな勉強をさせられた。
 ママとパパに頼まれたって。
 字の書き取りとか、算数じゃない。
 着物の着方。
 紅の差し方。
 踊り。
 もう疲れて嫌になったこともある。
 でも、逃げられないしサボれない。
 一回館から逃げようとしたら、たくさんの大きい犬に体中噛まれて、凄く痛かった。
 血もたくさん出た。
 秋倉おじさんには、いっぱい叱られた。
 お尻を叩かれて。
 それからは覚えてないけど。
 朋にも怒られた。
 親切にしてくれるおじさんをガッカリさせるなって。
 でもね。
 おかしいよ。
 ぼくは来たくて来たんじゃないのに。

「まだそんなこと言ってるの」
 朋はウンザリな顔をする。
 長くなった黒髪を一つに結わえて、ぼくの髪も整える。
 朋ほど長くないから、肩まで下ろしているんだ。
「秋倉おじさんは優しい人なの。それでね、ボクは明日から特別に菊の間に連れて行ってくれるんだって」
「菊の間って……あの入っちゃいけないとこ?」
「そうだよ、雛。あのなかにね、ボクにあげたいものがあるって」
「朋はゆーしゅーだから」
 秋倉おじさんの真似をする。
 朋はゆーしゅー。
 ぼくは違う。
 わがまま。
 だから、朋は凄いって思う。
 けどね、いつも夢がそれじゃダメだって言ってるんだ。
/187ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ