この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
kiss
第8章 reach

 初めて見たのは、コンビニの裏の河原だった。

 小雨の中、棒アイスを咥えて傘も差さずに立っていた。
 水滴に溶かされたチョコが白い生クリームを道連れに地面に落ちていく。
 顎に伝う液体をどうでもよさそうに一瞥して、轟々と流れる川を眺めていた。
 ほっそりとした体に濡れたシャツが張り付いて、短パンからは毛が一本も生えていない滑らかな脚が覗いていた。
 少年のように。
 俺はビニール傘を指先で支えながら、魅入られたみたいに近づいたんだ。
 長い睫毛を上に向けて、じっと見つめてくる。
 アイスを口から外し、ボタリと落として、汚れた口で笑った。
「あんたさ、雨……好き?」
 どんな言葉を予想したわけでもないが、俺は自然と答えていた。
「ああ。好きだ」
 彼は愉しそうに手を上げて雨に打たれた。
「おれも好きー……」
 そして、柔らかな草むらに倒れた。
 声を上げる間もなく。
 衝動的に走り寄る。
 閉じた眼からは、水滴と混ざって涙が流れていた。
 首筋に残る縄の跡。
 つい手首を見てしまう。
 細い腕の先には、沢山の刃物の切り傷。
 額に張り付く髪を退けると、弱弱しい青年そのものだった。
「おい」
 反応はない。
 ただ、瞼の裏で眼球が動いているだけ。
 眠っているんだ。
 俺は少しだけ安心した。
 周りを見渡しても、人影はない。
「……っくそ」
 見て見ぬ振りができたら……
 きっとああはならなかったのに。
 俺は片腕で彼を担ぎ上げ、よろめきながら歩き出した。
 何かを踏みつけた音がして眼を落すと、緑の中で黒と白の液体が互いを犯し合うように波打っていた。
/187ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ