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kiss
第9章 finger
「ほら。こうやって前髪上げたら……」
 細い指先で額から髪をすき上げる。
 滴が目に落ちたのかタヤは瞬きした。
 ぶるっと首が痙攣する。
 帯乃は急いで手を止めた。
「あ。引っ掻いちゃった?」
「……いえ、あの」
 タヤが小さい声で呟く。
「……くすぐったいです」
「タヤちゃん敏感肌なんだ」
 髪を押さえたまま、帯乃が悪い笑みで顔を近づける。
 すると水飛沫を上げながら唇に手が当てられた。
 口を塞がれたまま首を傾げると、タヤが泣きそうな顔で言った。
「だ、だって……帯乃さんキスするじゃないですかあ」
 え。
 なにこの可愛い生き物。
 帯乃はパチパチ瞬きする。
 まあ、キスしようとしてたんだけど。
 ペロッと指を舐める。
「ひっ」
 離そうとした手を掴んで指を咥える。
 チュプ。
 舌をわざと動かしながら。
「ちょ、帯乃さ……っ、くすぐった……」
 ビクビクしながら顔を逸らす。
 舌全体で手のひらを舐め上げると、わかりやすくタヤが飛び上がった。
 太ももをもぞもぞさせる。
 帯乃はそれをちらっと見てタヤに囁いた。
「……食べていい?」
 唇を濡らして。
「お……帯乃さん。勘弁……して、くださいよお」
 ああ、もう。
 涙浮かべちゃって。
 逆効果にもほどがあるよ。
 ガッとタヤを引き寄せる。
 熱と困惑に赤くなった顔。
 はあはあと荒く息をして。
「……だめ?」
 タヤは涙目で首をふるふる振った。
「ていうか、ナニしようとしてるかわかってる?」
 クスと笑いながら。
 少しの無言の抵抗。
 それから震える声で言った。
「せ……せっくす、ですよね」
 桃ちゃん。
 予言は当たるかもね。
 どうあってもこの子は手元に置きたいよ。
「可愛い」
 チュッと額にキスを落とす。
 これだけにしとくつもりだったんだけど。
 本人が覚悟してたんだもんね。
 帯乃は口の端を持ち上げる。
 それからタヤの下半身に手を伸ばした。
「あっ、く……やッッ。なにして」
 湯の中でそれを包み込むように緩く扱く。
「んー。なにしてるんでしょうか」
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