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私を見て
第2章 砂漠の真ん中で
「あれ、人?」
加藤が指差す方には、何かが見えた。
始めは小さく、でもすぐに大きくなり、それはすぐにわかったが、俺達には何の反応も出来なかった。
砂ぼこりを立てて。それは優雅に駈けていた。
「そこの者たち」
まだ、少し距離を置いて。砂ぼこりは止んだ。
声は女の声だけど、顔を、目だけ残して布を巻いているから性別がわからない。
馬の上だから、身長すらわからない。
「聞いているのか?それとも、そこの娘みたく寝てるのか?」
声の主は手を伸ばし、指差した。
その先には、あり得ない光景だった。
「嘘だろ……」
こんな状態で。
ここは砂漠で。
あろうことか、長谷川は、スーツケースに寄りかかり潰れていた。
「あらら。長谷川ちゃんかわい~」
加藤が長谷川に近づく。
俺はその進路に立った。
「何だよ?この娘、辻ちゃんのじゃないじゃん?」
「加藤、女の子と見れば手を出すのやめれ。長谷川はオレと龍の同級生なんだから」
何も言わない俺の代わりに若林が加藤を止めてくれた。
でも、加藤はずっとニヤニヤ笑ったままだ。
笑ったまま手を上げた。
「仕方ないなぁ。2対1は勝てないよ」
そんなの、本音じゃないんだろう。