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真珠浪漫物語
第17章 昔みたいに…
…カフェ浪漫
扉にはcloseの札が下げられ、千がカウンターでグラスを磨き上げている。
…そして、そのカウンターには当麻が一人、ウィスキーのグラスを傾けていた。
千は何も言わず、何も聞かずに黙ってグラスを磨き続ける。
「…もう閉店なのに、ごめんね。千君」
当麻の優しい笑顔は相変わらずだ。
だから尚更辛くなる。
千は明るく答える。
「俺一人ですから。構いませんよ」
当麻は、照明が消えた小さな舞台を振り返る。
…綾香に出逢ったのも、ここだったな…。
初めて、綾香と踊ったのも…
初めてキスをしたのも…
…と、店の蓄音機からドイツ人歌手の甘い恋の歌が流れてきた。
千は蓄音機の螺子を巻き終わると、再びグラスを磨き出す。
「…綾香…この歌、大好きなんですよね…店仕舞いした後、一人で毎日聞いていたな…」
…そう言えば、綾香がよく歌っていた…。
当麻は目を閉じて、口ずさむ。
綾香の歌声を記憶の底から手繰り寄せながら…。
…いつか、街灯りの側で会おう
…昔みたいに
誰もいない小さな舞台で、二人で踊った。
ぎこちなく手をつなぎ…
どちらからともなく、キスをした…
あの日はもう帰らない…。
永遠に…
…いつか、街灯りの側で会おう
…昔みたいに
さよなら、僕の初恋…
さよなら、僕の愛したひと…
…この日、カフェ浪漫の灯りは、いつまでも消えることはなかった。
扉にはcloseの札が下げられ、千がカウンターでグラスを磨き上げている。
…そして、そのカウンターには当麻が一人、ウィスキーのグラスを傾けていた。
千は何も言わず、何も聞かずに黙ってグラスを磨き続ける。
「…もう閉店なのに、ごめんね。千君」
当麻の優しい笑顔は相変わらずだ。
だから尚更辛くなる。
千は明るく答える。
「俺一人ですから。構いませんよ」
当麻は、照明が消えた小さな舞台を振り返る。
…綾香に出逢ったのも、ここだったな…。
初めて、綾香と踊ったのも…
初めてキスをしたのも…
…と、店の蓄音機からドイツ人歌手の甘い恋の歌が流れてきた。
千は蓄音機の螺子を巻き終わると、再びグラスを磨き出す。
「…綾香…この歌、大好きなんですよね…店仕舞いした後、一人で毎日聞いていたな…」
…そう言えば、綾香がよく歌っていた…。
当麻は目を閉じて、口ずさむ。
綾香の歌声を記憶の底から手繰り寄せながら…。
…いつか、街灯りの側で会おう
…昔みたいに
誰もいない小さな舞台で、二人で踊った。
ぎこちなく手をつなぎ…
どちらからともなく、キスをした…
あの日はもう帰らない…。
永遠に…
…いつか、街灯りの側で会おう
…昔みたいに
さよなら、僕の初恋…
さよなら、僕の愛したひと…
…この日、カフェ浪漫の灯りは、いつまでも消えることはなかった。