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真珠浪漫物語
第22章 エピローグ 〜終曲〜
千は涙で滲む目をごしごしと袖で拭った。
…と、その時、一際大きな歓声が響き渡った。
千ははっと振り返る。
「綾香!待ってました!」
「おかえり!綾香!」
客席の歓声に迎えられ、綾香が舞台に登場する。
紅いチャイナドレスの胸元には白薔薇のコサージュ。
髪には赤い薔薇。
耳元の真珠が優し気に揺れる。
綾香は優雅に一礼し、ゆっくりと客席を包み込むように優しく、艶やかに歌い出す。
聴くもの全てに愛と恩寵を与えるような声で…。
舞台袖ではふくよかな新人歌手のさくらがうっとりと感極まっている。
「…綾香さん!やっぱ綺麗だあ!素敵だあ!わだすも綾香さんみてえな歌手になりてえ!なあ、ケン坊さん、なれるだべか?」
さくらは横のケン坊を振り返る。
「…が、がんばれ!」
ケン坊は力強く頷き、肩を叩く。
梨央は両手を組み、顎の下に当て、うっとりと夢見るような表情で綾香を見つめ、綾香の唄に聞き惚れる。
…お姉様…。
世界で一番お美しい方…。
そして、世界で一番愛しい方…。
梨央は幸せです。
…梨央はデビュッタントの翌日、屋敷の温室で綾香に抱きしめられながら言われたことを生涯忘れないだろうと思い返す…。
「…梨央。私達は離れてはいけないの。私達は運命の姉妹だから…そして、運命の恋人だから…」
「…お姉様…!」
麝香香る抱擁の中、梨央は幸福の余り気が遠くなった。
「…梨央、愛しているわ。死ぬまで一緒よ…」
「…お姉様、私も…愛しています…私の命よりも…!」
綾香を熱く見つめる梨央の眼差しを捉え、綾香は妖艶にウィンクを飛ばす。
「…きゃ!恥ずかしい!」
梨央は乙女らしく恥じらい顔を覆う。
月城はやれやれといった表情で片眉を上げる。
ふと月城は、シャンパングラスに映る梨央の真珠を見つめる。
…真珠はさながらお二人のようだ。
きらきらと高貴に輝き光を放ち、観るものを捉え、魅了する。
気高く美しい姫君たち…。
舞台の綾香に向けて杯を上げる。
「…我が麗しの姫君たちに…乾杯!」
…麗しき薔薇の姫君たち…。
シャンパンの泡は泡沫の輝きを秘め、しかしそれは、永遠の輝きを記憶する…。
…麗しき真珠の姫君たち…。
太古よりの海の記憶を胸に眠り続け、そして今は麗しき主人達の元で光を放つ…。
…それは、今は昔の物語…。
〜La Fin〜
…と、その時、一際大きな歓声が響き渡った。
千ははっと振り返る。
「綾香!待ってました!」
「おかえり!綾香!」
客席の歓声に迎えられ、綾香が舞台に登場する。
紅いチャイナドレスの胸元には白薔薇のコサージュ。
髪には赤い薔薇。
耳元の真珠が優し気に揺れる。
綾香は優雅に一礼し、ゆっくりと客席を包み込むように優しく、艶やかに歌い出す。
聴くもの全てに愛と恩寵を与えるような声で…。
舞台袖ではふくよかな新人歌手のさくらがうっとりと感極まっている。
「…綾香さん!やっぱ綺麗だあ!素敵だあ!わだすも綾香さんみてえな歌手になりてえ!なあ、ケン坊さん、なれるだべか?」
さくらは横のケン坊を振り返る。
「…が、がんばれ!」
ケン坊は力強く頷き、肩を叩く。
梨央は両手を組み、顎の下に当て、うっとりと夢見るような表情で綾香を見つめ、綾香の唄に聞き惚れる。
…お姉様…。
世界で一番お美しい方…。
そして、世界で一番愛しい方…。
梨央は幸せです。
…梨央はデビュッタントの翌日、屋敷の温室で綾香に抱きしめられながら言われたことを生涯忘れないだろうと思い返す…。
「…梨央。私達は離れてはいけないの。私達は運命の姉妹だから…そして、運命の恋人だから…」
「…お姉様…!」
麝香香る抱擁の中、梨央は幸福の余り気が遠くなった。
「…梨央、愛しているわ。死ぬまで一緒よ…」
「…お姉様、私も…愛しています…私の命よりも…!」
綾香を熱く見つめる梨央の眼差しを捉え、綾香は妖艶にウィンクを飛ばす。
「…きゃ!恥ずかしい!」
梨央は乙女らしく恥じらい顔を覆う。
月城はやれやれといった表情で片眉を上げる。
ふと月城は、シャンパングラスに映る梨央の真珠を見つめる。
…真珠はさながらお二人のようだ。
きらきらと高貴に輝き光を放ち、観るものを捉え、魅了する。
気高く美しい姫君たち…。
舞台の綾香に向けて杯を上げる。
「…我が麗しの姫君たちに…乾杯!」
…麗しき薔薇の姫君たち…。
シャンパンの泡は泡沫の輝きを秘め、しかしそれは、永遠の輝きを記憶する…。
…麗しき真珠の姫君たち…。
太古よりの海の記憶を胸に眠り続け、そして今は麗しき主人達の元で光を放つ…。
…それは、今は昔の物語…。
〜La Fin〜