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真珠浪漫物語
第17章 昔みたいに…
綾香はひとしきり笑い、目尻の涙を拭う。
「…ごめんなさい。三年前にあんなに躍起になって別れさせられたのに、私が伯爵令嬢だと分かっただけで人は掌を返したように態度を変えるんだな…て、可笑しくなっちゃって…」
「…綾香…」
「ううん、責めているんじゃないの。…それが人間なのよね。地位や身分で判断するのが普通なんだわ…でも…」
…梨央は違った。
あんな場末の小さな舞台で歌う私を見て、最初から好きになってくれた。
私を探し当ててくれた。
あの日のあの梨央の熱い眼差し…。
あの手の温かさ…。
梨央の体温が、望己さんを失ってやさぐれて頑なだった私の心を溶かしてくれたんだ。
綾香は穏やかに当麻を見つめる。
「望己さん、私ね…今、愛している人がいるの」
「…え⁈」
「望己さんと別れて…もう人を愛するのはやめようと思ったの。…あんな辛い思いをするのはたくさんだって…もう誰も愛さない…て。でも、そんな私の心をずっとノックしてくれていた人がいたの…」
…恐る恐る、おずおずと…でも、決して諦めず一途に…
「その人が、私の閉ざされた心を開いてくれたの…」
当麻は諦めきれないように、尋ねた。
「誰なの?…それは…」
「今、連れてくる」
綾香は客間のドアを開けた。
思わず目を見張る。
…廊下に今にも泣き出しそうな顔をした梨央が立っていた。
ずっと泣いていたのか、目が赤く瞼が朱に染まっていた。
綾香は愛しさに胸が一杯になる。
「…ごめんね、梨央…。心配させたね」
「…お姉様…」
「おいで、私の可愛い梨央」
綾香は手を差し伸べる。
梨央はおずおずと、しかし、ぎゅっと綾香の手を握りしめる。
綾香は梨央の手を大切そうに握りしめ、客間に戻った。
そして、当麻の前に梨央を連れて行き梨央の顔を愛しげに見つめ、告白する。
「…私の妹の梨央。妹で…誰よりも愛する人…」
「…お姉様…!」
梨央は涙を溢れさせる。
当麻は驚きの余り絶句する。
「…そんな…妹さんなんだろう?」
「そう…母親違いだけど、妹…。許されないことかもしれない…でも、愛しているの。私はこれから梨央と二人で生きていきたいの…」
…だから…さよなら、望己さん。
大好きだった人…。
私が初めて愛した人…。
ようやく、心からさよならが言える…。
…あの日の貴方に…
…あの日の私に…
「…ごめんなさい。三年前にあんなに躍起になって別れさせられたのに、私が伯爵令嬢だと分かっただけで人は掌を返したように態度を変えるんだな…て、可笑しくなっちゃって…」
「…綾香…」
「ううん、責めているんじゃないの。…それが人間なのよね。地位や身分で判断するのが普通なんだわ…でも…」
…梨央は違った。
あんな場末の小さな舞台で歌う私を見て、最初から好きになってくれた。
私を探し当ててくれた。
あの日のあの梨央の熱い眼差し…。
あの手の温かさ…。
梨央の体温が、望己さんを失ってやさぐれて頑なだった私の心を溶かしてくれたんだ。
綾香は穏やかに当麻を見つめる。
「望己さん、私ね…今、愛している人がいるの」
「…え⁈」
「望己さんと別れて…もう人を愛するのはやめようと思ったの。…あんな辛い思いをするのはたくさんだって…もう誰も愛さない…て。でも、そんな私の心をずっとノックしてくれていた人がいたの…」
…恐る恐る、おずおずと…でも、決して諦めず一途に…
「その人が、私の閉ざされた心を開いてくれたの…」
当麻は諦めきれないように、尋ねた。
「誰なの?…それは…」
「今、連れてくる」
綾香は客間のドアを開けた。
思わず目を見張る。
…廊下に今にも泣き出しそうな顔をした梨央が立っていた。
ずっと泣いていたのか、目が赤く瞼が朱に染まっていた。
綾香は愛しさに胸が一杯になる。
「…ごめんね、梨央…。心配させたね」
「…お姉様…」
「おいで、私の可愛い梨央」
綾香は手を差し伸べる。
梨央はおずおずと、しかし、ぎゅっと綾香の手を握りしめる。
綾香は梨央の手を大切そうに握りしめ、客間に戻った。
そして、当麻の前に梨央を連れて行き梨央の顔を愛しげに見つめ、告白する。
「…私の妹の梨央。妹で…誰よりも愛する人…」
「…お姉様…!」
梨央は涙を溢れさせる。
当麻は驚きの余り絶句する。
「…そんな…妹さんなんだろう?」
「そう…母親違いだけど、妹…。許されないことかもしれない…でも、愛しているの。私はこれから梨央と二人で生きていきたいの…」
…だから…さよなら、望己さん。
大好きだった人…。
私が初めて愛した人…。
ようやく、心からさよならが言える…。
…あの日の貴方に…
…あの日の私に…