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真珠浪漫物語
第19章 Shall we dance ?
秋も日毎に深まり、北白川邸の庭の木々の葉も赤く色づき始めた。
綾香と梨央のデビュッタントに向けての様々なレッスンも佳境に入ろうとしていた。
月城は居間の飴色のモロッコ革のソファに並んで座る綾香と梨央に向かい、恭しく口を開いた。
「…早いもので、デビュッタントまであと一月余りとなってまいりました。…お嬢様方に置かれましては、日頃のお勉強に加え、デビュッタントの為のお稽古に日夜ご研鑽いただき、執事といたしましても大変喜ばしく存じております」
「やだ、月城さんてば。月城さんがそんなに褒めてくれるなんて…何かが起こる前触れ⁈」
綾香はわざと大袈裟に身震いする。
綾香は秋らしい、マルーン色のアフタヌーンドレスをさらりと着こなしている。
髪を令嬢らしく華やかにカールさせ、別珍のヘアバンドで留めているのも上品な雰囲気を醸し出している。
隣に控えめに座る梨央が、くすりと笑う。
梨央は、クリーム色のレースのブラウスに、ココア色のロングスカートという地味な服装だが、清楚な美貌と相まってよく似合っている。
長い髪を綺麗に編み込みにし、トパーズの髪留めをあしらっているのが貴族の令嬢らしい高貴さを漂わせている。
綾香は西洋人のように彫りの深い華やかな美貌、梨央は日本的な涼しげな美貌と正反対な容貌だが、美しさに関しては類を見ない美人姉妹なので、社交界でも二人の評判は今や増すばかり…お茶会や夜会の招待状も毎日、引きも切らずなのである。
月城はちらりと綾香を見やり、眼鏡を押し上げる。
「…まだ綾香様をお褒めしてはおりませんが…?」
「へ?」
不意に、明らかに温度が違う優しい笑みを浮かべ、月城は梨央を見つめる。
「…梨央様。梨央様は、最近はお茶会にも夜会にも嫌がらずに参加されて、本当に見違えるようにご成長されましたね。ロンドンの旦那様もお手紙で大変喜ばれておられましたよ。…梨央様のピアノも大変評判で、梨央様に音楽サロンで弾いていただきたいというお申し込みも捌ききれないほどです」
梨央は恥ずかしそうに微笑み俯く。
「…そんな…お姉様とご一緒なので安心して伺っているだけです。…私一人ではまだ恥ずかしくて…」
「少しずつ慣れられたら良いのです。ご無理はいけません」
…と、蕩けてしまいそうな甘やかな表情から、眼鏡の奥をキラリと光らせ、クールな眼差しを綾香に注ぐ。
「…そして、綾香様ですが…」
綾香と梨央のデビュッタントに向けての様々なレッスンも佳境に入ろうとしていた。
月城は居間の飴色のモロッコ革のソファに並んで座る綾香と梨央に向かい、恭しく口を開いた。
「…早いもので、デビュッタントまであと一月余りとなってまいりました。…お嬢様方に置かれましては、日頃のお勉強に加え、デビュッタントの為のお稽古に日夜ご研鑽いただき、執事といたしましても大変喜ばしく存じております」
「やだ、月城さんてば。月城さんがそんなに褒めてくれるなんて…何かが起こる前触れ⁈」
綾香はわざと大袈裟に身震いする。
綾香は秋らしい、マルーン色のアフタヌーンドレスをさらりと着こなしている。
髪を令嬢らしく華やかにカールさせ、別珍のヘアバンドで留めているのも上品な雰囲気を醸し出している。
隣に控えめに座る梨央が、くすりと笑う。
梨央は、クリーム色のレースのブラウスに、ココア色のロングスカートという地味な服装だが、清楚な美貌と相まってよく似合っている。
長い髪を綺麗に編み込みにし、トパーズの髪留めをあしらっているのが貴族の令嬢らしい高貴さを漂わせている。
綾香は西洋人のように彫りの深い華やかな美貌、梨央は日本的な涼しげな美貌と正反対な容貌だが、美しさに関しては類を見ない美人姉妹なので、社交界でも二人の評判は今や増すばかり…お茶会や夜会の招待状も毎日、引きも切らずなのである。
月城はちらりと綾香を見やり、眼鏡を押し上げる。
「…まだ綾香様をお褒めしてはおりませんが…?」
「へ?」
不意に、明らかに温度が違う優しい笑みを浮かべ、月城は梨央を見つめる。
「…梨央様。梨央様は、最近はお茶会にも夜会にも嫌がらずに参加されて、本当に見違えるようにご成長されましたね。ロンドンの旦那様もお手紙で大変喜ばれておられましたよ。…梨央様のピアノも大変評判で、梨央様に音楽サロンで弾いていただきたいというお申し込みも捌ききれないほどです」
梨央は恥ずかしそうに微笑み俯く。
「…そんな…お姉様とご一緒なので安心して伺っているだけです。…私一人ではまだ恥ずかしくて…」
「少しずつ慣れられたら良いのです。ご無理はいけません」
…と、蕩けてしまいそうな甘やかな表情から、眼鏡の奥をキラリと光らせ、クールな眼差しを綾香に注ぐ。
「…そして、綾香様ですが…」