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真珠浪漫物語
第19章 Shall we dance ?
「…ダンス、お歌は文句のつけようがありません」
「そうでしょうそうでしょう」
綾香はニンマリ笑う。
「…ただですね…お言葉遣いが、相変わらず不安定ですね。油断するとすぐにボロが出る」
月城は大袈裟に溜息を吐く。
「あ、なによ、それ。ボロってなによボロって!」
ムッとする綾香。
「事実なので仕方ありません。…やはりローマは1日にしてならず…ですね」
フッと笑い眼鏡を上げる。
「綾香様はとにかくデビュッタントまでにお言葉遣いを集中的に直していただけますように。下町言葉の伯爵令嬢など、あり得ませんからね」
「ヤな感じ〜」
膨れながらソファにふんぞり返る綾香である。
二人の会話が一段落したところにおずおずと口を開く梨央。
「…あの…あのね…月城…私のダンスなのだけど…」
ああ…と月城は、表情を和らげて慰めるように
「…お気になさることはありません。…梨央様ははにかみ屋さんでいらっしゃるから、ダンスはなかなか馴染めないだけなのです」
「…でも…ダンスがちっとも上達しないし…先生に申し訳なくて…」
肩を落とし、悄気る梨央…。
…梨央はダンスが苦手だ。
しかし、デビュッタントにワルツが踊れなくては話にならない。
その為、先月からダンスのレッスンの為に、フランス帰りのハーフのダンス教師に破格のレッスン料を支払い、出稽古に来て貰っている。
ダンス教師の名前は、ジュリアン・ド・ロッシュフォール。
母親は日本人で、九州出身の子爵令嬢。フランス貴族の父親は在フランス大使である。
ジュリアンは昨年まで、フランスのソルボンヌ大学に留学していたが、父親の勧めで日本に帰国し、今は上智大学に通う傍ら、上流階級の婦人や紳士にダンスを教えている。
ジュリアンは西洋人そのままのスタイルと華やかな美貌な上に、華麗なダンスの名手。流暢にフランス語と日本語を話し、フランス仕込みのユーモアとウィットに富んだ会話で上流階級の婦人や令嬢の心をたちまち鷲掴みにしてしまった。
多忙なジュリアンは個人レッスンは受けない信条なのだが、依頼が北白川伯爵令嬢の梨央と聞き、二つ返事で快諾してくれたと月城は嬉しげに報告してきたのだ。
しかし、大人しく恥ずかしがり屋の梨央に華やかな美貌のジュリアンは余りに荷が重すぎた。
…その上に…。
梨央には気が重い理由があった…。
「そうでしょうそうでしょう」
綾香はニンマリ笑う。
「…ただですね…お言葉遣いが、相変わらず不安定ですね。油断するとすぐにボロが出る」
月城は大袈裟に溜息を吐く。
「あ、なによ、それ。ボロってなによボロって!」
ムッとする綾香。
「事実なので仕方ありません。…やはりローマは1日にしてならず…ですね」
フッと笑い眼鏡を上げる。
「綾香様はとにかくデビュッタントまでにお言葉遣いを集中的に直していただけますように。下町言葉の伯爵令嬢など、あり得ませんからね」
「ヤな感じ〜」
膨れながらソファにふんぞり返る綾香である。
二人の会話が一段落したところにおずおずと口を開く梨央。
「…あの…あのね…月城…私のダンスなのだけど…」
ああ…と月城は、表情を和らげて慰めるように
「…お気になさることはありません。…梨央様ははにかみ屋さんでいらっしゃるから、ダンスはなかなか馴染めないだけなのです」
「…でも…ダンスがちっとも上達しないし…先生に申し訳なくて…」
肩を落とし、悄気る梨央…。
…梨央はダンスが苦手だ。
しかし、デビュッタントにワルツが踊れなくては話にならない。
その為、先月からダンスのレッスンの為に、フランス帰りのハーフのダンス教師に破格のレッスン料を支払い、出稽古に来て貰っている。
ダンス教師の名前は、ジュリアン・ド・ロッシュフォール。
母親は日本人で、九州出身の子爵令嬢。フランス貴族の父親は在フランス大使である。
ジュリアンは昨年まで、フランスのソルボンヌ大学に留学していたが、父親の勧めで日本に帰国し、今は上智大学に通う傍ら、上流階級の婦人や紳士にダンスを教えている。
ジュリアンは西洋人そのままのスタイルと華やかな美貌な上に、華麗なダンスの名手。流暢にフランス語と日本語を話し、フランス仕込みのユーモアとウィットに富んだ会話で上流階級の婦人や令嬢の心をたちまち鷲掴みにしてしまった。
多忙なジュリアンは個人レッスンは受けない信条なのだが、依頼が北白川伯爵令嬢の梨央と聞き、二つ返事で快諾してくれたと月城は嬉しげに報告してきたのだ。
しかし、大人しく恥ずかしがり屋の梨央に華やかな美貌のジュリアンは余りに荷が重すぎた。
…その上に…。
梨央には気が重い理由があった…。