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真珠浪漫物語
第19章 Shall we dance ?
数日後、とある乗馬クラブの馬場の柵に、力なく凭れかかるジュリアン・ド・ロッシュフォールの姿があった。
せっかく、パリで最新流行の乗馬パンツを履いているのにいつもの王子様オーラもなく精彩を欠いている…。

そんなジュリアンの姿を、厩から出て来た縣は端正な顔で微笑みながら見やり、秘密めいた言葉をかける。
「…どうやら麗しの赤薔薇にやられたようだね。忠告しておいてあげるべきだったかな。白薔薇に触れるには赤薔薇の荊を越えなくてはならないことを…」
ジュリアンは縣を見上げ、驚いたように呟く。
「…アガタ…。知っていたのか?」
姿を見て嬉しげに近づいてきた愛馬アルフレッドの鼻先を撫でてやりながら、縣は明るく答える。
「…私も赤薔薇の牽制にやられたクチさ。…しかもこの上なく淫靡なやり方でね…」
少し色っぽく目配せをする。
「…インビ…?まだまだ知らない日本語があるな…」
ジュリアンは首を捻る。
「美しくも儚い白薔薇は、我々が手にしてはならないということさ。…薔薇は遠くで見守り、愛でるものだとね。…そう割り切ると薔薇の番人の仕事もなかなか良いものだよ」
ジュリアンは柵に頬杖をつき、ついでに溜息も吐いた。
「アガタ、君は大人な上にロマンチストだなあ…僕はなかなか割り切れそうにないよ…ああ!梨央さん…ようやく見つけた僕の理想の大和撫子…!」
ジュリアンの手は虚しく宙に彷徨う…。
縣は弟にするように優しく肩を叩く。
「…君もその内、分かるさ。あの二人の愛し合う姿は秘密の花園に咲く希少な薔薇だ。…美しいものを傍観出来ることこそ、大人の愉しみであり、エスプリであるとね。何しろ君は日本とフランスが誇る王子様なのだから」
「…なんだかまだよく分からないけれど、アガタに励まされたら元気が出て来たよ。…アガタ、遠乗りに行かないか?久しぶりにトリスタンが走りたがっているんだ」
すっかり元の調子に戻り華やかな声を上げたジュリアンに、縣は和かに頷く。
「それでこそジュリアンだ」
縣は革の乗馬用手袋をはめると颯爽と愛馬に跨り、ジュリアンもそれに続いた。
馬場に晩秋の日差しが優しく降り注いでいた。


…数週間後、立ち直りの早いジュリアンは懲りもせず、夜会で遭遇した梨央に再びプロポーズしようとして綾香に見つかり、容赦なく蹴り倒されることになるのだが、それはまた別のお話…。
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