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真珠浪漫物語
第20章 運命の選択
デビュッタントまで1か月を切った初冬の昼下がり、北白川家は常にない緊張感に包まれていた。
内閣総理大臣伊藤閣下の正室、竹子夫人の訪問を控えていたからである。
「お迎えの準備は万全だな。…この花瓶は少々、品に欠く。九谷に変えるように…」
執事の月城が、玄関ホールの小机の花瓶にまで細心の注意を払う。
「エプロンに皺が寄っていますよ。今すぐ着替えていらっしゃい。すみれ、お茶の準備は大丈夫ね?」
家政婦兼、梨央の乳母ますみは、新人メイドの服装のチェックもしつつ、他の段取りにも目を配る。
「はい。全て整いました。…あ、お嬢様方…」
すみれは大階段から滑らかに降りて来る二人の美貌の伯爵令嬢の姿に目を奪われる。
綾香は、モスグリーンのペイズリー柄のアフタヌーンドレスに身を包み、ベネチアンガラスの芸術的なデザインのロングネックレスをしている。
髪は波型にウェイブさせ、顔に添わせて結い上げているのが洗練された美しさを醸し出している。
梨央はベビーピンクのアフタヌーンドレス姿。
ハイウエストで、胸の下に切り替えがあり、濃いピンクのリボンを前で結び尾を長く垂らしているのがいかにも可愛らしい。
髪は綺麗にカールさせ、小豆色の別珍のカチューシャをしている。
…やはりうちのお嬢様方はどの貴族のお嬢様よりお美しいわ…。
すみれは美しき主人達を誇りに思った。
「…伊藤閣下夫人のお車がお着きになりました」
玄関から下僕のやや緊張した声が聞こえた。
綾香は梨央を振り返り、その美しい手を差し出す。
嬉しそうに…相変わらず恥じらいながら梨央は、華奢な白い手を伸ばし、綾香の手を大切そうに握りしめる。
寄り添いながら玄関ホールに向かう二人の後ろ姿を見ながら、すみれは
…本当に仲睦まじいお二人だこと…。
うちのお嬢様方は社交界では赤薔薇と白薔薇に例えられるというけれど、まさにその通りだわ。
お二人で対のお美しい薔薇の精のよう…。
と、微笑ましく思いながら憧憬の溜息を吐いた。
内閣総理大臣伊藤閣下の正室、竹子夫人の訪問を控えていたからである。
「お迎えの準備は万全だな。…この花瓶は少々、品に欠く。九谷に変えるように…」
執事の月城が、玄関ホールの小机の花瓶にまで細心の注意を払う。
「エプロンに皺が寄っていますよ。今すぐ着替えていらっしゃい。すみれ、お茶の準備は大丈夫ね?」
家政婦兼、梨央の乳母ますみは、新人メイドの服装のチェックもしつつ、他の段取りにも目を配る。
「はい。全て整いました。…あ、お嬢様方…」
すみれは大階段から滑らかに降りて来る二人の美貌の伯爵令嬢の姿に目を奪われる。
綾香は、モスグリーンのペイズリー柄のアフタヌーンドレスに身を包み、ベネチアンガラスの芸術的なデザインのロングネックレスをしている。
髪は波型にウェイブさせ、顔に添わせて結い上げているのが洗練された美しさを醸し出している。
梨央はベビーピンクのアフタヌーンドレス姿。
ハイウエストで、胸の下に切り替えがあり、濃いピンクのリボンを前で結び尾を長く垂らしているのがいかにも可愛らしい。
髪は綺麗にカールさせ、小豆色の別珍のカチューシャをしている。
…やはりうちのお嬢様方はどの貴族のお嬢様よりお美しいわ…。
すみれは美しき主人達を誇りに思った。
「…伊藤閣下夫人のお車がお着きになりました」
玄関から下僕のやや緊張した声が聞こえた。
綾香は梨央を振り返り、その美しい手を差し出す。
嬉しそうに…相変わらず恥じらいながら梨央は、華奢な白い手を伸ばし、綾香の手を大切そうに握りしめる。
寄り添いながら玄関ホールに向かう二人の後ろ姿を見ながら、すみれは
…本当に仲睦まじいお二人だこと…。
うちのお嬢様方は社交界では赤薔薇と白薔薇に例えられるというけれど、まさにその通りだわ。
お二人で対のお美しい薔薇の精のよう…。
と、微笑ましく思いながら憧憬の溜息を吐いた。