この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
真珠浪漫物語
第20章 運命の選択
伊藤竹子は北白川家の客間の重厚な1人掛けのソファに、さながらこの家の主人かのような威厳を持って、座っている。竹子目当てに若手政治家から大物政治家に至るまで、今だに「大磯詣で」が行われているのも頷ける風格である。
パールグレイの高価なドレープのドレスに、黒瑪瑙のブローチ、銀髪を綺麗に結い上げて、一分の隙もない所作で、注がれたダージリンを一口飲み、綾香と梨央をまるで孫を見るかのように優しく見つめ話しかける。
「二人とも息災で何よりです。社交界では二人の評判も益々高く、嬉しく思いますよ。…特に梨央、引っ込み思案がだいぶ直りましたね」
梨央は恥ずかしそうに、嬉しそうに頷く。
「ありがとうございます、竹子様。まだまだですが、お姉様のお陰でなんとか…」
綾香と目を合わせる。
綾香は梨央の手をそっと握る。
竹子は二人の様子に目を細める。
「仲良きことは美しき哉…ね。大変結構なことですね。伯爵もお喜びでしょう」
と、前置きし、竹子はやや居住まいを正す。
「…今日こちらに伺ったのは他でもありません。…綾香。貴方のことです」
「私の?」
竹子は頷き、彫りの深い目で綾香をじっと見つめた。
「…貴方、イタリアに行って本格的に声楽を学ぶ気はない?」
梨央がびくりとたじろぎ、綾香を見つめる。
綾香は大きな瞳を更に見開いた。
「私がイタリアに?…竹子様、どういうことですか?」
竹子はゆっくりと物語を語るように語り始めた。
「…二浦環を知っていますか?」
「もちろんですわ。憧れのオペラ歌手です」
綾香は目を輝かせて答える。
「環は若い頃から私が見込んで面倒を見ていた娘のような存在なの。…環がイタリアに留学して、研鑽を重ね、ミラノスカラ座で日本人初のプリマドンナとなって、私も大層喜びました。…でね、その環に私は貴方のことをお手紙に書いたの。貴方の再来のような凄い天才歌手がいる!と。…そうしたら環が、ぜひ自分が育てたいからイタリアに留学させて欲しいと返事が来たの。
…綾香、貴方ミラノに留学してオペラの勉強をしてみない?環の元で…」
綾香は驚きの余り、声も出ない。

梨央が固唾を飲んで、綾香の顔を見つめる。
…お姉様が…イタリアに…遠くに行かれてしまう…⁈
小刻みに手が震えるのを、梨央は止めることができなかった。


/226ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ