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真珠浪漫物語
第21章 デビュッタント
綾香と梨央が踊りの輪に加わると、列席の人々はもちろんのこと、踊り始めていた紳士、淑女からも驚きの声が上がった。
デビューしたばかりの美貌の姉妹、北白川伯爵令嬢が手を取り合い、ワルツを踊っている…。
女性同士で踊るなど、前代未聞のことである。
非難めいた視線があっても無理からぬことなのに、見咎める者は一人もいなかった。
…皆、二人のこの世のものとは思えない美しい姿に感動を覚えたからだ。
周りの反応など二人はもはや気にもかけていなかった。綾香は梨央だけを見つめ、梨央は綾香だけを見つめて踊る。
赤いドレスと白いドレスがさながら薔薇の花のようにふわりと優雅に、優しく膨らみ、くるくると夢のように回る…。
「…いつまでも…踊っていたい…お姉様と…今夜がずっと続けばいいのに…」
梨央は微笑みながら真珠のように美しい涙を零した。
涙は真珠の珠のようにはらはらと溢れ落ちる。
「…梨央…泣かないで。私達はいつも一緒よ…」
綾香は優しく囁きながら、梨央をリードする。
梨央は瞬きする間も惜しいかのように、綾香を見つめ続けた。
…大好きなお姉様…。
お姉様のお姿を眼に焼き付けておかなくては…。
お会い出来なくなっても、お姉様を思い出せるように…。
梨央の瞳には綾香の慈愛に満ちた美しい笑顔だけが映し出されているのだ。
縣は月城に囁く。
「…今夜の主役はお二人だな…。美は何にも勝る。…人は美しいものに憧れの気持ちを持たずにはいられない。…私は梨央さんと…綾香さんに出逢えて幸せだった…美しき薔薇の番人は世界一の果報者なのだよ」
「縣様…僭越ながら私もです。…お二人にお仕えできる私は幸せ者です」
ジュリアンが肩をすくめる。
「僕もさ。あの二人の天使にはもはや敬意を表するよ。…いや、一人は悪魔かも知れないけどね、僕にとってはさ」
…この日の綾香と梨央のワルツは、後々まで憧憬の想いと共に、人々の口から長く語り継がれることになる…。
デビューしたばかりの美貌の姉妹、北白川伯爵令嬢が手を取り合い、ワルツを踊っている…。
女性同士で踊るなど、前代未聞のことである。
非難めいた視線があっても無理からぬことなのに、見咎める者は一人もいなかった。
…皆、二人のこの世のものとは思えない美しい姿に感動を覚えたからだ。
周りの反応など二人はもはや気にもかけていなかった。綾香は梨央だけを見つめ、梨央は綾香だけを見つめて踊る。
赤いドレスと白いドレスがさながら薔薇の花のようにふわりと優雅に、優しく膨らみ、くるくると夢のように回る…。
「…いつまでも…踊っていたい…お姉様と…今夜がずっと続けばいいのに…」
梨央は微笑みながら真珠のように美しい涙を零した。
涙は真珠の珠のようにはらはらと溢れ落ちる。
「…梨央…泣かないで。私達はいつも一緒よ…」
綾香は優しく囁きながら、梨央をリードする。
梨央は瞬きする間も惜しいかのように、綾香を見つめ続けた。
…大好きなお姉様…。
お姉様のお姿を眼に焼き付けておかなくては…。
お会い出来なくなっても、お姉様を思い出せるように…。
梨央の瞳には綾香の慈愛に満ちた美しい笑顔だけが映し出されているのだ。
縣は月城に囁く。
「…今夜の主役はお二人だな…。美は何にも勝る。…人は美しいものに憧れの気持ちを持たずにはいられない。…私は梨央さんと…綾香さんに出逢えて幸せだった…美しき薔薇の番人は世界一の果報者なのだよ」
「縣様…僭越ながら私もです。…お二人にお仕えできる私は幸せ者です」
ジュリアンが肩をすくめる。
「僕もさ。あの二人の天使にはもはや敬意を表するよ。…いや、一人は悪魔かも知れないけどね、僕にとってはさ」
…この日の綾香と梨央のワルツは、後々まで憧憬の想いと共に、人々の口から長く語り継がれることになる…。