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真珠浪漫物語
第22章 エピローグ 〜終曲〜
「綾香!あと5分で開演だってさ!」
千がバンマスからの伝言を伝えに走って来る。
…浅草カフェ浪漫の楽屋は相変わらず猥雑だ。
出演者の煙草の紫煙…。チラシが無造作に壁に貼られ、色とりどりの衣装が衣装部屋から溢れている。
綾香は鏡に向かって器用に口紅を引きながら返事をする。
「了解」
千は綾香を見ながらしみじみ呟く。
「…でもさ、イタリア留学断っちゃうなんて…よく思い切ったよね、綾香」
綾香は事もなげに笑う。
「いいの。…チャンスはいくらでもあるわ。…私に何が一番大切なのか、はっきり分かったから」
綾香は今朝、梨央が温室で摘んで創ってくれた白薔薇のコサージュを紅いチャイナドレスの胸に着け、同じく赤い薔薇の髪飾りを結い上げた髪に飾った。
そして白薔薇を愛しげに撫でながら
「…それに、私は歌が歌えるならどこでもいいの。…愛する人が側にいればね」
鏡越しに千にウィンクする。
「ご馳走様!…あ、綾香。時間だよ」
「今行くわ」
綾香は、真珠のピアスを大切そうに着け、席を立つ。
客席では…。
1番テーブルに座り、夢見るような表情で舞台の始まりを待つ梨央の姿があった…。
白い絹のドレスに真珠の首飾り、可憐に結い上げた髪には白薔薇を飾っている。
「…全く…!北白川家のご令嬢が浅草のカフェで歌手を勤めるなど…世も末です!」
苦虫を噛み潰したような顔で、隣の席に座るのは黒い制服に身を包んだ月城である。
「いいじゃないの、月城。お姉様の歌手復帰には竹子様も賛成して下さったのよ。貴族の令嬢が市井の職場で働く事は赤十字の精神にも則ることだと…」
梨央は月城を宥めながら、中二階に設置された新しい席に座る竹子を見上げ、丁寧に一礼した。
「…しかし北白川の娘は変わっておるのう。イタリア留学を断り、浅草カフェの歌手に戻るとは…」
紺色のドレス姿の竹子の隣に座るのは夫であり内閣総理大臣の伊藤である。
自慢の髭を撫でながら首を振る。
「良いのです。…あの娘はまだまだ自由に羽ばたかせておいた方が面白い…。可憐な金糸雀も飛び立つ練習が必要ですしね」
竹子は舞台を見ながら微笑む。
「ふむ…何だかよう分からんが、しかし…あの娘のおっぱいは実にいいのう!尻もたまらん!一度撫でてみたい…イテテテッ!」
竹子が翡翠の杖で表情も変えずに、伊藤の靴先を突いたのだ。
お付きの護衛が呆気に取られる。
千がバンマスからの伝言を伝えに走って来る。
…浅草カフェ浪漫の楽屋は相変わらず猥雑だ。
出演者の煙草の紫煙…。チラシが無造作に壁に貼られ、色とりどりの衣装が衣装部屋から溢れている。
綾香は鏡に向かって器用に口紅を引きながら返事をする。
「了解」
千は綾香を見ながらしみじみ呟く。
「…でもさ、イタリア留学断っちゃうなんて…よく思い切ったよね、綾香」
綾香は事もなげに笑う。
「いいの。…チャンスはいくらでもあるわ。…私に何が一番大切なのか、はっきり分かったから」
綾香は今朝、梨央が温室で摘んで創ってくれた白薔薇のコサージュを紅いチャイナドレスの胸に着け、同じく赤い薔薇の髪飾りを結い上げた髪に飾った。
そして白薔薇を愛しげに撫でながら
「…それに、私は歌が歌えるならどこでもいいの。…愛する人が側にいればね」
鏡越しに千にウィンクする。
「ご馳走様!…あ、綾香。時間だよ」
「今行くわ」
綾香は、真珠のピアスを大切そうに着け、席を立つ。
客席では…。
1番テーブルに座り、夢見るような表情で舞台の始まりを待つ梨央の姿があった…。
白い絹のドレスに真珠の首飾り、可憐に結い上げた髪には白薔薇を飾っている。
「…全く…!北白川家のご令嬢が浅草のカフェで歌手を勤めるなど…世も末です!」
苦虫を噛み潰したような顔で、隣の席に座るのは黒い制服に身を包んだ月城である。
「いいじゃないの、月城。お姉様の歌手復帰には竹子様も賛成して下さったのよ。貴族の令嬢が市井の職場で働く事は赤十字の精神にも則ることだと…」
梨央は月城を宥めながら、中二階に設置された新しい席に座る竹子を見上げ、丁寧に一礼した。
「…しかし北白川の娘は変わっておるのう。イタリア留学を断り、浅草カフェの歌手に戻るとは…」
紺色のドレス姿の竹子の隣に座るのは夫であり内閣総理大臣の伊藤である。
自慢の髭を撫でながら首を振る。
「良いのです。…あの娘はまだまだ自由に羽ばたかせておいた方が面白い…。可憐な金糸雀も飛び立つ練習が必要ですしね」
竹子は舞台を見ながら微笑む。
「ふむ…何だかよう分からんが、しかし…あの娘のおっぱいは実にいいのう!尻もたまらん!一度撫でてみたい…イテテテッ!」
竹子が翡翠の杖で表情も変えずに、伊藤の靴先を突いたのだ。
お付きの護衛が呆気に取られる。