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真珠浪漫物語
第22章 エピローグ 〜終曲〜
客席係りのケン坊は、護衛やら秘書やらが鹿爪らしい顔付きで客席に座り辺りを威圧している中、おどおどしながら千に近寄る。
「…伊藤閣下がお忍びで来るなんて…聞いていたか?千」
「ううん。竹子様が綾香の歌を聴きたいと仰ったら、ご自分もと着いてこられたらしい。お陰で朝からオーナーは舞い上がって大変な騒ぎさ」
千は楽しげに答える。
綾香の歌手復帰が決まり(勿論条件付きで。月に2回、週末のみとの契約を氷の秘書が譲らなかった)オーナーは急拵えだが、貴賓席を設えた。
内閣総理大臣のご令室竹子が観覧希望を申し出たからだ。
店を閉めることまで考えていたオーナーは男泣きに泣いた。
綾香の復帰を聞きつけたファンが駆けつけ、カフェは以前と同じ…いや、それ以上の大盛況ぶりを見せている。
今夜は立ち見まで出て、客席は興奮に包まれている。
「ここはパリのムーランルージュによく似ているね。なかなか刺激的だ!」
ご機嫌で辺りを見渡すのはジュリアンだ。
「君に気に入って貰えて良かったよ。…しかし、赤薔薇の姫君のする事はいつだって想定外だな」
朗らかに笑いながら縣は梨央を見て優雅に会釈する。
「だが…白薔薇の隣には赤薔薇が常に咲いていなくてはね」
「何を謎めいた事を呟いているんだ?アガタ、君はフランス人以上にロマンチストだ。…あ!梨央さんが!僕を見て笑った!」
小躍りせんばかりのジュリアンを可笑しそうに見ながら、縣はシャンパンを一口飲む。
「…庶民の店の割にはなかなかいけるな」
千は貴賓席にシャンパンを運ぶケン坊の手伝いをする。
「オーナーが綾香さんに頼まれたんだってさ。シャンパンをメニューに載せるようにって。こんなしゅわしゅわしたの、本当に美味いのかねえ?」
「…梨央さんの好物だからだよ…多分ね」
…と、カフェの入口付近に佇む見覚えのある顔に、千はどきりとする。
「…当麻さん!」
千は急いで駆け寄った。
「…伊藤閣下がお忍びで来るなんて…聞いていたか?千」
「ううん。竹子様が綾香の歌を聴きたいと仰ったら、ご自分もと着いてこられたらしい。お陰で朝からオーナーは舞い上がって大変な騒ぎさ」
千は楽しげに答える。
綾香の歌手復帰が決まり(勿論条件付きで。月に2回、週末のみとの契約を氷の秘書が譲らなかった)オーナーは急拵えだが、貴賓席を設えた。
内閣総理大臣のご令室竹子が観覧希望を申し出たからだ。
店を閉めることまで考えていたオーナーは男泣きに泣いた。
綾香の復帰を聞きつけたファンが駆けつけ、カフェは以前と同じ…いや、それ以上の大盛況ぶりを見せている。
今夜は立ち見まで出て、客席は興奮に包まれている。
「ここはパリのムーランルージュによく似ているね。なかなか刺激的だ!」
ご機嫌で辺りを見渡すのはジュリアンだ。
「君に気に入って貰えて良かったよ。…しかし、赤薔薇の姫君のする事はいつだって想定外だな」
朗らかに笑いながら縣は梨央を見て優雅に会釈する。
「だが…白薔薇の隣には赤薔薇が常に咲いていなくてはね」
「何を謎めいた事を呟いているんだ?アガタ、君はフランス人以上にロマンチストだ。…あ!梨央さんが!僕を見て笑った!」
小躍りせんばかりのジュリアンを可笑しそうに見ながら、縣はシャンパンを一口飲む。
「…庶民の店の割にはなかなかいけるな」
千は貴賓席にシャンパンを運ぶケン坊の手伝いをする。
「オーナーが綾香さんに頼まれたんだってさ。シャンパンをメニューに載せるようにって。こんなしゅわしゅわしたの、本当に美味いのかねえ?」
「…梨央さんの好物だからだよ…多分ね」
…と、カフェの入口付近に佇む見覚えのある顔に、千はどきりとする。
「…当麻さん!」
千は急いで駆け寄った。