この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
真珠浪漫物語
第22章 エピローグ 〜終曲〜
「当麻さん!いらしてたんですね!」
駆け寄ってきた千を見て、当麻は柔かに笑った。
上質のカシミヤのコートを着て帽子を被った当麻は、相変わらず男ぶりが水際立っている。
「…綾香が、浪漫の歌手に復帰したと風の便りで聞いてね…」
「はい!もうすぐ始まりますよ。どうぞ中へ!今、席を作らせますから…」
当麻は首を振った。
「いや、いい…。やはりこのまま帰るとするよ」
「え?何でですか?せっかくいらしたのに…」
当麻は寂しげに笑う。
「…綾香の顔を見ると決心が鈍りそうだからね」
「決心?」
「…ベルリンに戻ることにしたよ。大学院に入り直して、もっともっと医学を突き詰める。僕も新しい人生を生き直すよ…」
「…当麻さん…」
当麻は懐かしげに舞台と客席を見渡す。
「…日本を発つ前に、綾香と出逢ったこの店を見納めておきたかったんだ…僕の青春だ…」
飴色の柱を愛しげに撫でる。
…いつか街灯りの側で会おう…
昔みたいに…
懐かしい愛の歌…。
青春の日々…。
美しき我が初恋のDIVA…。
「…当麻さん…」
当麻は吹っ切れたように明るく笑い、千の頭を撫でる。
「…千君も元気で…」
入口のドアに手を掛け、出て行こうとする当麻に千は思わず声をかける。
「あの!当麻さん!綾香に伝言は⁈」
当麻はゆっくり振り返る。
「…ないよ。…心の中で、いつも綾香の幸せを祈っているからね」
そして、そのまま優しい笑顔を残したままドアを開け、初雪の降り積もる外の雑踏へと消えていった。
駆け寄ってきた千を見て、当麻は柔かに笑った。
上質のカシミヤのコートを着て帽子を被った当麻は、相変わらず男ぶりが水際立っている。
「…綾香が、浪漫の歌手に復帰したと風の便りで聞いてね…」
「はい!もうすぐ始まりますよ。どうぞ中へ!今、席を作らせますから…」
当麻は首を振った。
「いや、いい…。やはりこのまま帰るとするよ」
「え?何でですか?せっかくいらしたのに…」
当麻は寂しげに笑う。
「…綾香の顔を見ると決心が鈍りそうだからね」
「決心?」
「…ベルリンに戻ることにしたよ。大学院に入り直して、もっともっと医学を突き詰める。僕も新しい人生を生き直すよ…」
「…当麻さん…」
当麻は懐かしげに舞台と客席を見渡す。
「…日本を発つ前に、綾香と出逢ったこの店を見納めておきたかったんだ…僕の青春だ…」
飴色の柱を愛しげに撫でる。
…いつか街灯りの側で会おう…
昔みたいに…
懐かしい愛の歌…。
青春の日々…。
美しき我が初恋のDIVA…。
「…当麻さん…」
当麻は吹っ切れたように明るく笑い、千の頭を撫でる。
「…千君も元気で…」
入口のドアに手を掛け、出て行こうとする当麻に千は思わず声をかける。
「あの!当麻さん!綾香に伝言は⁈」
当麻はゆっくり振り返る。
「…ないよ。…心の中で、いつも綾香の幸せを祈っているからね」
そして、そのまま優しい笑顔を残したままドアを開け、初雪の降り積もる外の雑踏へと消えていった。