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真珠浪漫物語
第6章 嵐の夜のあとさき
翌朝、綾香が目覚めると自分の胸元に顔を埋め、幸せそうに眠っている少女が目に留まった。
…誰これ…。
少女はなぜか綾香の乳房を浴衣越しに握りしめて眠っている。
赤ん坊が母親の乳を求めるかのように。

ああ、お姫様か…。
綾香は笑いながら、梨央の耳元に息を吹き込む。
「…おはよう、お姫様…」
梨央はゆっくりと瞼を開け、綾香を見つめた。
「…お姉様…なぜここに?」
「あんたが帰らないって言い張って泊まったんじゃん。…それはそうと、あんた、さっきから私の胸、触ってるんだけど?」
梨央ははっとして手を見る。
綾香の豊かな乳房をぎゅっと握りしめている自分に気づく。
「…す、すみません!む、無意識に…お姉様の…」
真っ赤になって詫びる。
「いいよ、別に。減るもんじゃなし。…でも、あんたはまだまだ赤ちゃんなんだね」
と笑う。
梨央は、少し膨れながら
「…私…もう大人です」
と、拗ねてみせる。

でも…
梨央は手のひらをそっと見つめる。
…お姉様の胸…触ったのね…私…。
まだ手に残る柔らかくて優しい感触…。
くすぐったいような甘い疼きが沸き起こる。

「さあ、顔を洗ってくるか。…あんたもおいで」
と、綾香が起き上がったその時。

表が不意に慌ただしく騒がしい人の声と物音に包まれた。
入口の前で小競り合いするような声が聞こえる。
「ちょっと!あんたたち!綾香に何の用なんですか!」
千の慌てふためく声だ。
「…そこをどいて下さい。貴方に乱暴な真似はしたくない」
「…ちょっと!あんた!」
それと同時に、家の扉が乱暴に開けられ、数名の人間が中に踏み込む音。
梨央は思わず、綾香にしがみつく。
綾香はとっさに自分の背中に梨央を庇った。
襖が開けられ、現れたのは黒い正装に身を包んだ執事月城の緊迫した姿だった。
月城は寝床で綾香の背中にしがみついている梨央を見つけ、溜息交じりに呟いた。
「…お嬢様…やはりこちらにいらっしゃいましたか…」
「…月城…」
梨央は怯えたように、綾香の後ろに隠れる。
その様子に月城は密かに傷つき、しかし、普段の冷静さをつとめて保とうとしながら手を差し伸べる。
「…お嬢様、お迎えに参りました。さあ、お屋敷にお戻りを…」
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