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真珠浪漫物語
第7章 白薔薇の館へ
月城は梨央の方に足を踏み出す。
梨央は粗末な浴衣を着、綾香に対してまるで愛しい恋人かのように縋り付いている。
月城を見る目は怯えていて、警戒心すらあり、それは月城がかつて見たことがないような梨央であった。
梨央のやや寝乱れた襟元や髪にも身の内から沸き起こる嫉妬にも似た感情を感じずにはいられない。
…お嬢様、なぜそのような婀娜めいたお姿で綾香様に縋っておられるのですか?
昨夜、一体何があったのですか?

問い詰めたい気持ちをぐっと堪え、眼鏡を押し上げながら
「…お嬢様、昨夜の顛末はあのカフェに伺い、一部始終確認いたしました。…綾香様が酔客からお嬢様を守ってくださったそうですね。綾香様、心より御礼を申し上げます」
月城は優雅に一礼してみせる。
綾香はふっと笑う。
「どういたしまして」
「おそらくその後、嵐になったのでお嬢様をこちらにお泊めいただいたのでしょう」
「察しがいいね、有能な執事さん」
月城は片眉を僅かに上げ、すぐに慇懃な態度を取り戻し
「綾香様には改めて御礼に伺います。…さあ、お嬢様、お屋敷にお戻り下さい」
手を差し伸べた月城に返って来たのは毅然とした梨央の拒絶の声だった。

「帰らないわ!…私はお姉様とずっとここにいる!絶対に帰らない!」
「…お嬢様…!」
月城は言葉を失う。
今まで、一度たりとも月城の言葉を拒んだことなどなかった梨央が、今はまるで月城のことを敵対する相手であるかのように見据えているのだ。
「…な、なんと…!」
梨央は綾香の胸にしがみついたまま、月城を睨みつけた。
「…お姉様が屋敷に来て下さらないなら、私がここに住みます!私とお姉様は姉妹なのよ、どうして離れ離れに暮らさなくてはならないの⁈」
「そ、それは…!」
綾香はため息を吐く。
「…昨日からこの一点張りだよ、執事さん」
「お嬢様!お嬢様がこのような粗末な家に住まわれるなど、言語道断です!」
綾香はむっとする。
「失礼だね」
月城は少し強引に梨央の腕を取る。
「お嬢様は昨夜からのお疲れで混乱しておられるのです。さあ、お屋敷にお戻りになってごゆっくり休まれてからご相談いたしましょう」
「嫌!一度帰ったらもうお姉様にお逢いできないわ!」
「お嬢様、こちらへ…」
従者と共に梨央を綾香から引き離す。
「嫌よ!お姉様!」
泣き喚く梨央。まるで迷子の幼子のようだ。
綾香は堪らず叫んだ。
「待って!」
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