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真珠浪漫物語
第11章 嵐の予感
その日から梨央は益々綾香に執着してゆくようになった。
綾香の姿が少しでも見えなくなると、幼子のように不安がり、綾香の姿を求めて屋敷中を探し回る。
綾香を探しあてると、何年も離れ離れになっていた愛しい恋人に巡り会えたかの駆け寄り、抱きつく。
「…お姉様!…お探ししていたのよ。…どこにいらしたの?」
「…ごめんごめん、月城と温室にいたんだ」
宥めるように梨央の髪を撫でる。
「…月城と…?」
聞き咎め、訝しがる梨央。
綾香の肩越しに薔薇の花を抱えた月城が佇んでいる。
「…月城と…何のご用だったの?お姉様…」
月城を硬い表情で見つめる梨央。
「庭を散歩していたら、月城が温室で花を選んでいたから手伝ったの。薔薇の棘を取るのって時間かかるからね」
月城は梨央に一礼して説明する。
「…縣男爵様が明日、急遽お見えになることになったのです。…縣様はこちらの薔薇が大変お気に入りでいらっしゃるので、その準備を…」
梨央は静かに頷いた。
「…そう…それはご苦労様…でも…お姉様のお手を煩わす必要はあるかしら…?…薔薇の棘は危ないわ。お姉様のお手に傷がついたらどうするつもりなの?」
普段聞いたことがないような梨央の叱責するような口調に月城ははっとした。
「…申し訳ございません。梨央様」
綾香は梨央をあやすように、抱き寄せて頬を軽く抓る。
「私がやらせてって頼んだの。面白そうだったからさ」
「…お姉様…」
綾香は戯けたように笑う。
「ここに来てからずっと、お嬢様お嬢様って奉られて、ムズムズしちゃってさ…私、貧乏性だからなにか仕事してないと落ち着かないんだわ。…だから月城は悪くないの」
「…そう…ですか…」
梨央はぎこちなく笑う。
綾香がその場の雰囲気を変えるように提案した。
「ねえ、梨央、ピアノ弾いて。私、梨央のピアノ大好き!あ、そうだ。今、浅草オペラで流行っている歌があるの。それ、弾いて!」
梨央は驚く。
「…え?わ、私に弾けるかしら…」
「大丈夫!教えるから!さ、行こ行こ!」
綾香は梨央の腕を抱えるようにして、促す。
そして、部屋を出る際に月城を振り返り、安心させるようにウィンクしてみせた。

「…綾香様…」
月城は頭を下げる。
そして先ほどの梨央の冷たい態度に少し傷ついたように憂いの表情を見せたが、気持ちを切り替え、手にした薔薇をベネチアングラスの花瓶に生けるのだった。

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