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真珠浪漫物語
第2章 浅草オペラカフェ
梨央の北白川伯爵の手紙の代読に唖然として言葉にならない綾香。
そんな綾香を優しく見つめる梨央。
「…お分かりいただけましたか?お姉様。貴方は私の姉で、北白川伯爵家の長女なのです」
「…そんな…いきなりそんなこと言われたって…信じられるわけないじゃない!…だ、大体死んだ母さんはそんなこと一言も…!わ、私の父親は私が生まれる前に死んだって言ってたんだ…!」
「朱音様はきっと、お父様のお立場を気遣って下さったのです。お優しいお母様だったのですね…」
「…母さん…」
綾香の美しい顔が一瞬、悲しげに曇る。
が、次の瞬間、鋭い眼差しで梨央を見ると
「で?私をどうしようっての?」
梨央は綾香の手を握りしめる。
はっとする綾香。
白魚のように白く、柔らかく、華奢な手だ。
…この子は箸より重いものなんか持ったことがないんだろうな…。
「お父様のご意志通り、我が家…北白川家に来ていただきたいのです。北白川伯爵令嬢として。…私はずっと一人っ子だと思っておりました。ですから、お姉様が出来て本当に嬉しいのです。…しかもこんなにお美しく、お唄の才能の素晴らしい方が私のお姉様だなんて…」
梨央の頬が紅潮し、瞳が潤んで来る。
「…お姉様、どうか私とご一緒に我が家にいらして下さい。今すぐにでも来ていただきたいのです」
梨央の清らかで屈託のない表情を見ているうちに、綾香の中に悪意にも似た感情が生まれた。
その形の良い唇に冷笑を浮かべ
「フン…冗談じゃないよ。…あんた、私を哀れんでいるんだろ?…今まで放って置かれた可哀想な愛人の子に情けをかけていい気になっているだけじゃないの」
「そんな…!」
「大金持ちの伯爵家に引き取って貰えると聞いて、私が泣いて喜ぶとでも思ってんの?あはは!おめでたいお嬢様だね。おめでたすぎて反吐がでるわ!」
月城が顔色を変え、梨央を庇う。
「お嬢様に向かいなんという暴言を…!」
綾香は毅然と立ち上がる。
「確かに私はこんな場末の歌手だよ。あんたなんかと比べられないほど卑しい存在さ。…でも私にも誇りってもんがあるんだ。…お嬢様、二度とここには来ないで!来たらこの店の用心棒が黙っちゃいないからね」
猛然と踵を返す絢香の背中に悲痛な声が響く。
「お姉様…!」
その声を振り払うかのように、綾香は店の奥へと姿を消した。
そんな綾香を優しく見つめる梨央。
「…お分かりいただけましたか?お姉様。貴方は私の姉で、北白川伯爵家の長女なのです」
「…そんな…いきなりそんなこと言われたって…信じられるわけないじゃない!…だ、大体死んだ母さんはそんなこと一言も…!わ、私の父親は私が生まれる前に死んだって言ってたんだ…!」
「朱音様はきっと、お父様のお立場を気遣って下さったのです。お優しいお母様だったのですね…」
「…母さん…」
綾香の美しい顔が一瞬、悲しげに曇る。
が、次の瞬間、鋭い眼差しで梨央を見ると
「で?私をどうしようっての?」
梨央は綾香の手を握りしめる。
はっとする綾香。
白魚のように白く、柔らかく、華奢な手だ。
…この子は箸より重いものなんか持ったことがないんだろうな…。
「お父様のご意志通り、我が家…北白川家に来ていただきたいのです。北白川伯爵令嬢として。…私はずっと一人っ子だと思っておりました。ですから、お姉様が出来て本当に嬉しいのです。…しかもこんなにお美しく、お唄の才能の素晴らしい方が私のお姉様だなんて…」
梨央の頬が紅潮し、瞳が潤んで来る。
「…お姉様、どうか私とご一緒に我が家にいらして下さい。今すぐにでも来ていただきたいのです」
梨央の清らかで屈託のない表情を見ているうちに、綾香の中に悪意にも似た感情が生まれた。
その形の良い唇に冷笑を浮かべ
「フン…冗談じゃないよ。…あんた、私を哀れんでいるんだろ?…今まで放って置かれた可哀想な愛人の子に情けをかけていい気になっているだけじゃないの」
「そんな…!」
「大金持ちの伯爵家に引き取って貰えると聞いて、私が泣いて喜ぶとでも思ってんの?あはは!おめでたいお嬢様だね。おめでたすぎて反吐がでるわ!」
月城が顔色を変え、梨央を庇う。
「お嬢様に向かいなんという暴言を…!」
綾香は毅然と立ち上がる。
「確かに私はこんな場末の歌手だよ。あんたなんかと比べられないほど卑しい存在さ。…でも私にも誇りってもんがあるんだ。…お嬢様、二度とここには来ないで!来たらこの店の用心棒が黙っちゃいないからね」
猛然と踵を返す絢香の背中に悲痛な声が響く。
「お姉様…!」
その声を振り払うかのように、綾香は店の奥へと姿を消した。