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真珠浪漫物語
第3章 二人の姉妹
屋敷に帰宅した梨央。
居間の革張りのソファーに腰を下ろしため息を吐く。
意気消沈し、悲しげな表情を浮かべている。
ティーセットを手にした月城、
「お嬢様、遅くなりましたがお茶の時間です。本日はアッサムティーです。ケーキはシェフが腕によりをかけて作ったザッハトルテ。…お嬢様の大好物ですよ」
ことさら明るく声をかける。
「…ほしくないわ…」
力のない声の梨央。
「少しでも召し上がらなければ…お昼も緊張してお残しになっていらしたのですから…」
「…お姉様…私のことがお嫌いなのね…」
梨央の美しい瞳が悲しく翳る。
「すごく強い目で睨まれたわ…あんな目で見つめられたのは生まれて初めて…胸が苦しくなったわ…」
胸に手を当てる梨央。
綾香の強く美しく冷たい眼差しが蘇り、心臓が鼓動を刻む。
…また苦しくなった…綾香さんに…お姉様に拒まれたから?
ううん、悲しいだけじゃない…この甘くて苦しい気持ちはなにかしら…。
わからない…初めてだもの、こんな苦しい気持ち…。
お姉様を、あの舞台で見た時からずっと…。
この気持ちは…なに?
「お嬢様、お加減がお悪いのですか?主治医の丹羽先生をお呼びしますか?」
眉を顰め、案じる月城。
「…大丈夫…部屋で少し休みます…暫く誰も近づかないように、人払いを頼みますね」
夢見るような心もとない眼差しで、ゆっくりと居間を横切り、ホールの大階段を登る梨央。
月城は静かに梨央を見送る。
「…お嬢様…」
そして、ふとさきほどの浅草カフェでの綾香の面影を思い出す。
「梨央お嬢様とは全く似ていらっしゃらなかったな。…だが…ぞっとするほど美しい方だった…禍々しい妖気すら感じるほどの…」
月城は居間のカーテンを閉めに窓辺に向かう。
窓の外には早くも夕焼けが広がっていた。
「…綾香様…か…」
口元に薄く笑みを浮かべ、カーテンを閉め、そのまま洗練された足取りで居間を後にした。
居間の革張りのソファーに腰を下ろしため息を吐く。
意気消沈し、悲しげな表情を浮かべている。
ティーセットを手にした月城、
「お嬢様、遅くなりましたがお茶の時間です。本日はアッサムティーです。ケーキはシェフが腕によりをかけて作ったザッハトルテ。…お嬢様の大好物ですよ」
ことさら明るく声をかける。
「…ほしくないわ…」
力のない声の梨央。
「少しでも召し上がらなければ…お昼も緊張してお残しになっていらしたのですから…」
「…お姉様…私のことがお嫌いなのね…」
梨央の美しい瞳が悲しく翳る。
「すごく強い目で睨まれたわ…あんな目で見つめられたのは生まれて初めて…胸が苦しくなったわ…」
胸に手を当てる梨央。
綾香の強く美しく冷たい眼差しが蘇り、心臓が鼓動を刻む。
…また苦しくなった…綾香さんに…お姉様に拒まれたから?
ううん、悲しいだけじゃない…この甘くて苦しい気持ちはなにかしら…。
わからない…初めてだもの、こんな苦しい気持ち…。
お姉様を、あの舞台で見た時からずっと…。
この気持ちは…なに?
「お嬢様、お加減がお悪いのですか?主治医の丹羽先生をお呼びしますか?」
眉を顰め、案じる月城。
「…大丈夫…部屋で少し休みます…暫く誰も近づかないように、人払いを頼みますね」
夢見るような心もとない眼差しで、ゆっくりと居間を横切り、ホールの大階段を登る梨央。
月城は静かに梨央を見送る。
「…お嬢様…」
そして、ふとさきほどの浅草カフェでの綾香の面影を思い出す。
「梨央お嬢様とは全く似ていらっしゃらなかったな。…だが…ぞっとするほど美しい方だった…禍々しい妖気すら感じるほどの…」
月城は居間のカーテンを閉めに窓辺に向かう。
窓の外には早くも夕焼けが広がっていた。
「…綾香様…か…」
口元に薄く笑みを浮かべ、カーテンを閉め、そのまま洗練された足取りで居間を後にした。