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真珠浪漫物語
第12章 美しき薔薇の番人
信じられないというような顔をした梨央に、縣は優しく語りかける。
「…北白川伯爵もまだまだ海外生活が長くなられるはず。綾香さんがご一緒に住まわれるようになったとしても女所帯では心細いこともあるでしょう。…綾香さんと梨央さんの関係も複雑なものになるでしょうし…梨央さんが困った時にはぜひ、私を頼って欲しいのです」
梨央がまた大粒の涙を零した。
「…縣様…私は…縣様に酷い仕打ちをしてしまったのに…そんな優しいことを仰らないで下さい…」
縣は肉親のように梨央を抱きしめた。
「泣かないでください。梨央さん…私は貴方を妻に迎えられなくなっても、貴方の人生にかかわって生きていきたいのです。…あの日、あの温室で…私は貴方に恋をした。まだ幼い貴方に…。
貴方を見守り続けた日々は幸せでした。
薔薇の番人の役目が終わっても、美しい薔薇が雨風に打ちひしがれないよう見守りたいのです。…私の我儘を許していただけますか?」
「…縣様…!」
号泣し続ける梨央の肩を優しく撫でる。
綾香は唇に不敵な笑みを浮かべ、昔の口調で話しかけた。
「…あんたって人はどこまでお人好しなんだか…貴族のお坊ちゃまってのはみんなこうなのかね?」
「私は美しき姫君を護る騎士のつもりなのですよ。昔からアーサー王の物語が大好きでね。…あ、そうそう…梨央さんを護るついでにこちらの美人だが少々ガラの悪い姫君も護って差し上げることも吝かではありませんが?」
縣が初めて意地の悪い笑いを浮かべた。
「ちょっと…!なにその失礼な言い草は…」
「…しかしいくらなんでもガラが良いとはお世辞にも申せませんので…」
二人は顔を見合わせて、一斉に吹き出した。
ひとしきり笑い、綾香が真面目な顔で言った。
「…ありがとう、縣さん…。私、必ず梨央を幸せにする。辛い思いは絶対にさせない。貴方の分も梨央を大切にする」
縣が穏やかに頷く。
「…お願いしますよ…綾香さん」
号泣し続ける梨央を綾香が縣から受け取り、強く抱きしめる。
それを優しく見守る縣。
…温室の入り口で一部始終をそっと伺っていた月城は、ほっとしたような嬉しいような寂しいような表情を浮かべ、そっと踵を返し屋敷に戻って行ったのだ。
「…北白川伯爵もまだまだ海外生活が長くなられるはず。綾香さんがご一緒に住まわれるようになったとしても女所帯では心細いこともあるでしょう。…綾香さんと梨央さんの関係も複雑なものになるでしょうし…梨央さんが困った時にはぜひ、私を頼って欲しいのです」
梨央がまた大粒の涙を零した。
「…縣様…私は…縣様に酷い仕打ちをしてしまったのに…そんな優しいことを仰らないで下さい…」
縣は肉親のように梨央を抱きしめた。
「泣かないでください。梨央さん…私は貴方を妻に迎えられなくなっても、貴方の人生にかかわって生きていきたいのです。…あの日、あの温室で…私は貴方に恋をした。まだ幼い貴方に…。
貴方を見守り続けた日々は幸せでした。
薔薇の番人の役目が終わっても、美しい薔薇が雨風に打ちひしがれないよう見守りたいのです。…私の我儘を許していただけますか?」
「…縣様…!」
号泣し続ける梨央の肩を優しく撫でる。
綾香は唇に不敵な笑みを浮かべ、昔の口調で話しかけた。
「…あんたって人はどこまでお人好しなんだか…貴族のお坊ちゃまってのはみんなこうなのかね?」
「私は美しき姫君を護る騎士のつもりなのですよ。昔からアーサー王の物語が大好きでね。…あ、そうそう…梨央さんを護るついでにこちらの美人だが少々ガラの悪い姫君も護って差し上げることも吝かではありませんが?」
縣が初めて意地の悪い笑いを浮かべた。
「ちょっと…!なにその失礼な言い草は…」
「…しかしいくらなんでもガラが良いとはお世辞にも申せませんので…」
二人は顔を見合わせて、一斉に吹き出した。
ひとしきり笑い、綾香が真面目な顔で言った。
「…ありがとう、縣さん…。私、必ず梨央を幸せにする。辛い思いは絶対にさせない。貴方の分も梨央を大切にする」
縣が穏やかに頷く。
「…お願いしますよ…綾香さん」
号泣し続ける梨央を綾香が縣から受け取り、強く抱きしめる。
それを優しく見守る縣。
…温室の入り口で一部始終をそっと伺っていた月城は、ほっとしたような嬉しいような寂しいような表情を浮かべ、そっと踵を返し屋敷に戻って行ったのだ。