この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
真珠浪漫物語
第12章 美しき薔薇の番人
嵐が去ったあとの温室は、外からのまばゆいばかりの朝陽を浴びてきらきらと輝いている。
縣は朝露を含む美しい白薔薇の株に脚を進める。
乱れたところが微塵もない薔薇の群…
…昨夜のあれは夢か幻だったのか…
だがすぐに、美しくも妖しく淫らな夜の梨央の姿が脳裏に浮かび、夢ではなかったと思い返す。

…と、背後に気配を感じ振り向くと…
綾香と梨央が温室の入り口に佇んでいた。
綾香は琥珀色のドレス。髪は美しく結い上げられ、品良く化粧が施され、その西洋人形にも似た華やかな美貌が輝くばかりである。
綾香の陰に隠れるように俯きがちに佇んでいる梨央。
白いレースのブラウスに青い小花が散ったスカートが楚々として似合っている。
さらさらの美しい黒髪は綺麗に若々しく結い上げられ、白薔薇が飾られている。
清らかな美貌にしかし縣は隠しようもないしっとりとした色香を感じ取った。

「月城に聞きました。もうお帰りになるのですか?」
綾香はその見るものを釘付けにせずにはいられない強く美しい眼差しで縣を見つめた。
縣は穏やかに笑う。
「…ええ。…嵐は過ぎ去りました。…私の心の嵐も…」
梨央がおずおずと顔を上げ、小さなしかしはっきりした声で告げた。
「…縣様…ごめんなさい。…あの…私…縣様には心から感謝しております…大切にしていただいたこと…楽しかったこと…全て私の大事な想い出です…お姉様にお逢いしなければ、私は縣様のお嫁様になっておりました。それは嘘偽りのない気持ちです…」
縣は梨央を慈しみの眼差しで見つめる。
「ありがとう、梨央さん。…その言葉が聞けて私は満足です。…伯爵には婚約話は白紙に戻していただくようお手紙を書きます」
「縣様!」
縣はゆっくり梨央に近づき、安心させるように髪を優しく撫でる。
…まるで出逢った頃の幼女の梨央に対するように。
「ご安心してください。梨央さんと綾香さんのことはもちろんお知らせしません。ただ私の気持ちが変わったとお伝えします」
梨央の瞳に透明な涙が溢れる。
「…それでは…縣様のお立場が…」
縣はハンカチを取り出し梨央の綺麗な涙を優しく拭う。
「ご心配いりません。かつてのように後見人の立場に戻していただきたいと申し上げるだけですから…」
「…それでは…」
梨央が目を見張る。
縣は端正な顔に朗らかな笑みを浮かべる。
「…これからも私は梨央さんを社会的にお護りするつもりです」
/226ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ