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PM2時〜パッカー車の恋人〜
第27章 妻の男

次の日、俺は車には乗らず、電車で男が住む街に向かっていた。
通勤以外で電車に乗るのは、久しぶりだ。
平日のラッシュ時間を終えたこの時間は、電車も混んでいない。
横浜方面から真逆のこの電車は、さらにすいていた。
こんなにマッタリと電車に乗るのは、いつぶりだろうか?
車内に入る日の光が暖かく、俺を眠りに誘う…。
『ねぇ、涼。私ね小さい頃、赤い電車に乗って横浜に行ってたんだよ。』
『京浜急行って言うんだよ!涼は乗った事ある?』
『私が生まれた街は、海の近くで、海で潮干狩りもできるの。今は近くに水族館も出来たんだよ。』
楽しそうに笑う紗蘭に、俺はそうなんだ。と、頷く。
懐かしい紗蘭との記憶を電車での時間が、思い出させてくれていた。
あの時、紗蘭の言葉に興味を持って、二人一緒にこの場所を訪れていたら、少しは未来が変わっていたのだろうか…?
今は、こんなにも紗蘭の生まれた地に興味を持って、こうして電車に乗って訪れているのに。
思えば、俺なりに紗蘭を幸せにしてきたつもりだったが、こうした当たり前の事を、紗蘭とはしてこなかった気がする。
もっと紗蘭の話を聞いてあげたり、紗蘭の行きたい所へ一緒に行ってあげたりすれば良かったのかもな…。

