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PM2時〜パッカー車の恋人〜
第27章 妻の男

「狭いですけど、どうぞ。」
「あ、ありがとう。」
助手席のドアを彼がさりげなく開けてくれて、少し驚いた。
そんな彼の車は軽自動車で、男二人が乗るには、少し窮屈な感じだ。
海沿いを走る車。
隣にいるのが、妻の浮気相手ではなければ、すごく気持ちいい光景なのにな。
自分が今いる状況が、何だかおかしくなってきた。
海を見る俺に彼が話し掛けてきた。
「星野さん、煙草吸いますか? 」
「いや、俺は吸わない。」
「今、吸ってもいいですか?」
「あぁ、いいよ。」
片手でハンドルをさばきながら、もう片方の手で煙草を吸う。
横から香る煙草の香りは、紗蘭から感じたメンソール系の香り。
それが更に彼が紗蘭の相手だと、俺に追い討ちをかけているように感じた。
沈黙の中、車は軽快に海沿いを進んでいく。
海が全く似合わない俺と、日に焼けた肌で、海がよく似合う男。
そんな対象的な男に、紗蘭は何故恋をしたのか?
写真で見るよりずっと精悍な顔をしていて、落ち着いた彼の隣りで、俺はそんな事を考えていた。

