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報酬
第1章 日常
さっぱり身に憶えが...

「ないなんて言わせないわよ!」

「う...でもホントなんだよ!全く憶えないし、ましてやそんな儀式とか知らないし!」

「儀式!儀式?誰がそんな事言ったのよ。儀式ってのは人が考え出した思想の産物よ。世界中にある祭りとか、葬儀や婚礼がそれ!」

「じゃぁ何なんだよ。その条件て」

「絶望と...死...への強過ぎる願望。」

「そんな...まさかオレが?」

「何でもわかる...て言ったわよね?君の今のその視線の先よ。...あのクローゼットの奥。オナホと一緒に送られて来たその小包。」

「なっ!あれは...別にただの...」

「ただの青酸カリウムよね。」

「...。」

「終わりにしたかったのよねぇ。自分のその歪み切った卑屈な人生を!」

「そんなことお前に関係...」

「あるのよ?ちゃんと。...それが第一の条件なんだもの。」

「く...やりづれーなぁ。」

「私は君の中でずっと君の悪夢を食べてきたの。それが私の役目だから。だから君が死を決めたなら、それに抗う事なんて出来ないし、止める術も...理由もないの。君の肉体と精神が滅びたら、私もそこで終わり。黙って消滅するしかなかったのよ。その時の役目を果たす悪魔もちゃんと居るから。」

「それも、オレの中に?やっぱ悪...」

「死神。」

背筋に冷たいモノが走った。

「死を強く望む者がそれを求め、私達サキュバスの能力を自らの意識レベルで封印したとき。そいつは覚醒するの。」

「死神...てホントにいるのか」

「まだそんな事言ってるの?私が目の前に居るのに...。私達の糧は人の記憶を喰らうこと。死神の糧は...精神体そのもの。わかり易くいうと...魂を喰らうこと。」

「それなら死神も一緒に...。」
「居なくなるわね。もちろん。それだけが死神の役目だもの。」

「なんか...恐ろしい話だなぁ」

今更ながら背筋が寒くなる。

「でもどうして?死神じゃなく君が?」

「そこよ!そこ!」

なんなんだ?その嬉しそうな目は?

「嬉しそう?当たり前よぉ。こうして具現化出来るなんて思いもよらなかったものぉ!」

だから何なんだよ!その不吉過ぎる笑顔は!

「具現化したサキュバスの捕食するものが何だかわかる?」

「ん?夢?記憶?じゃないのか?」

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