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わけありっ、SS集!
第1章 緋狐(ひぎつね)の宝玉

 薬草を煎じて飲ませると、母は嘘のように元気になった。やつれた身体はもとの張り艶を取り戻し、数日後にはまた働けるようになった。
 その日その日を食いつないでいく貧乏暮らしには違いないけれど、また元来の生活を取り戻すことができたのだ。

 母に山での一連の出来事を話すと、母は緋狐にまつわるある言い伝えを話して聞かせてくれた。
 なんでも一説によると、緋狐は神の化身なのだという。人間の行いを見て、心の汚れたものには制裁を、心の清らかなものには慈悲を与えてくれる。
 少年が緋狐の宝玉を奪わなかったから、母も少年も助かることができたのかもしれない。
 もしあの時緋狐に危害を加えてでも宝玉を奪い取っていれば、きっと少年は、あのまま山の中で野垂れ死んでいただろう。

「おまえが優しい子だったから、おまえも私も助かったんだよ」

 母に頭を撫でられながら、少年は思い返していた。
 緋色の美しい小狐の、同じく緋色の無邪気で凛とした眼差しを。行いを見られていたのか。
 少年はぽかんとした顔を母に向けた。
 まさに、狐につままれたような気分だった。


おわり
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