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わけありっ、SS集!
第9章 バイオレンスな彼女

「……リョウ、ねえ、リョウってば」
泣きそうな声がする。
俺はゆっくりと瞳を開けた。
目の前には――メイド……さん?
「良かったー目、開いたっ」
そしてこの声は、ひかるちゃん?
俺はベッドから飛び起きた。途端に額から何かが落ちた。
拾いあげると、それは白い濡れタオルだった。
そして目の前にはやはり、俺の買ったメイド服を着たひかるちゃんの姿だ。
「なんで……」
「ち、違うのっ! これはその、お詫びというか。あたしのせいで怪我しちゃったんだし」
恥ずかしそうにもじもじしながら、何か言っている。けれども軽い耳鳴りがしてよく聞き取れなかった。
「それにこのメイド服……すごく高かったんでしょ? 明日捨てるのは譲らないけど、もったいないって思ったのよ! 別に、アンタのためなんかじゃ……」
「そうか、これは夢なのか!」
「…………は?」
「だって、ひかるちゃんがこんな優しいはずないもん」
「なんですって?」
そうだよ、こんなの嬉しすぎる夢に決まってる。
夢なら何も怖くない。彼女のバイオレンスだって。
俺はメイド服姿の彼女を思い切り抱きしめた。
「愛してるよ、ひかるちゃん!」

