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第7章 愛と孤独

　梨花は下を向き、蚊の泣くような小さな声で呟いた。

　「申し訳ありませんでした…」

　「秋津さん、もうすぐ、赤ちゃんに会えますね！
忙しくなりますよ！
わたしの姉も去年出産したばかりです。
甥っ子は可愛いです。
ご両親ならそれ以上なんでしょうね！
ご主人と素敵な家庭を築いて下さい！」

　梨花は、涙を流しながら、『ごめんなさい』を繰り返した。

「今は不安定な時期らしいですよね。
姉もそうでした。
ちょっとした喧嘩をしただけで、泣きながら実家に帰ってきたりもしてましたし……
ご主人がお忙しい方なら、尚更、秋津さんも不安になりますよね？
お気持ち分かりますから」

　梨花は何度も謝った後、『あの…この事は警察や主人には……』
不安げに白石に聞いた。

　「事を大きくするつもりはありません。
今後は川上さんに対して仕事のやりやすい環境を約束して頂けますか？」

　「はい…
すみれ……ごめんなさい。
つい、昔を思い出してしまうの…
結婚して赤ちゃんに恵まれて幸せなはずなのに…
その反面、涼太が本当に私を思ってくれているのか？
いつも不安になった。
そんな時はすみれの事ばかり思い出して嫉妬にかられてしまうの。
私も悪いのにね……
本当にごめんなさい」

　「梨花……」

　逞しかった女豹は、しおらい羊に入れ替わってしまったかの様に、私達に一礼し、飲み物代をテーブルの上に置いて帰っていった。


　白石は、ジョッキのビールをごくごくと飲み干し、「緊張するわー！！　こういうの慣れてませんから！！」

　そう言って笑った。

　「有難う御座います」

　私は白石に頭を下げ、心からのお礼を言った。