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第1章 愛を契る

　「すみれちゃん、お嬢様も大変なんだよ？
こんな暮らしの裏には、身動き取れないしがらみがあったり、逃れられない宿命があったりね…

　最終学歴は、大卒である事。
みんながバイトなどでお小遣いを稼ぐ時間に教習所以外の日は、お茶、お花、着付け、マーナー講座、お習字、英会話などのお稽古を押し付けられている。

　その時間以外は自由だし、お小遣いも充分貰っている。

　でもね、その自由な時間にも制限があるんだ…

　私ね、親が決めた人と結婚するのよ。
三島屋の後継者として親が選んだ人とね。
好きでもない人とセックスして跡継ぎを生む事も私の宿命。

　ーーだから、限られた時間は私の好きな様にして過ごすの」

　「ーーそうなんだ…」

　「うん……
すみれちゃん、……
私ね、ずっとすみれちゃんの事見ていた…」

　「えっ？」

　「凛とした人で、うちに秘めた情熱を上手く隠しているけど、本当は解き放して欲しい、情熱を表に出して生きたいと願っている。

　誰にも話せない秘密…あるよね？

　『陽だまり猫』さんは、すみれちゃんなんでしょ？」

　　
　葉月の言葉に驚き、ドキッとし怖くもなった。

　まるで、子供がイタズラをした時に、親に怒られるのを恐れ、それを咄嗟に隠したくなる様な心境と似ているのではないか…？